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BMWアルピナ「D4Sグランクーペ」はディーゼルの洗練の極み! まぎれもなく今乗っておきたい1台です

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 神村 聖

生涯記憶に刻んでおきたい、秀逸なアルピナマジック

生まれついてのそこつ者である筆者は、この試乗を前に車両の周囲をじっくり検分することもなくコックピットに収まり、STARTボタンによるエンジン始動は着座してから。そして、まずはコクピットドリルも兼ねて敷地内をゆっくり走らせてみたのだが、じつはこの段階ではガソリン版のB4Sに乗っているとばかり思いこんでいた。

しかし、撮影の都合でエンジンをアイドリング状態にしたままいったん降車し、車外から「カラカラカラ」というかすかなサウンドを聞きつけて、ようやくトランクリッドに取り付けられた、小さな「D4S」の車名バッヂを確認するに至ったのだ。

自分自身の感覚レベルの低さを白状してでも言いたかったのは、新型D4Sグランクーペの直列6気筒ディーゼルエンジンが、じつに洗練されていることである。

可変タービン・ジオメトリーを採用する2基のターボチャージャーは、アルピナの手練れによって調律を施され、1750rpmから2750rpmの高範囲にわたって730Nmもの最大トルクをみなぎらせる。

先代D4から継承された、ディーゼルの得意分野である豊かなトルクを誇るうえに、48Vマイルドハイブリッドのモーターアシストが加わったことによって、とくに低速域ではスロットルを軽く踏み込んだだけで、とてもレスポンシブ。中速域以降も力強く、スロットルを踏めば踏んだだけ、じつに軽快にスピードを乗せてゆく。

そしてワインディングでドライバーを魅了するのは「ディーゼルなのに」なんて前置きを一切必要としない、素晴らしい直6サウンドである。

内燃機関の喜びを全身体感できるパワーユニット

あくまで私見ながら、6気筒ディーゼル+ツインターボのサウンドや加速感は、1990年代アルピナの名作「B10ビターボ」を連想させる。ディーゼル/ガソリンを問わず、今これほど内燃機関の喜びを全身体感できるパワーユニットは、ほかにはないかもしれないとさえ思ってしまうのだ。

この極上の内燃機関を支えるのが、「素晴らしい」というほかないシャシーの絶妙なセットアップだろう。高速コーナーの続く軽井沢インター周辺のワインディングロードでは、良識から逸脱しない程度のスピード域であっても、ボディサイズを感じさせない軽快さを存分に満喫できる。

アルピナD4sグランクーペ

D4Sグランクーペの車両重量は、1970kg。姉にあたる「B8グランクーペ」の2140kgから比較すれば軽いとはいえ、もはや2トン級にも及ぶ堂々たる体躯。しかしながら、その身のこなしは軽快そのものである。また操舵フィールは非常にナチュラルなので、ハンドリングがとても扱いやすいのも大きな美点かと思われる。

軽快なハンドリングは、どうしても乗り心地の硬さに直結してしまうのが物理的な常識なのだろう。しかも、幹線道路から少し外れた軽井沢の生活道路は、路面状況がお世辞にも良いとは言えない。アスファルトの割れや一部剥がれたところも散見できる。

ところが、そんな荒れた道であっても、D4Sグランクーペは不快な突き上げなどをまるで感じさせることもなく、感応性の高いステアリングにかすかな振動を伝えてくるのみ。くわえて、アルピナ独自の細かいチューニングによって上手く設えられたアルラッド(All-Rad:4WD)システムもよく働き、730Nmの極太トルクを急速に振り出しても、姿勢を乱すようなことはない。

こうして走らせていると、BMWアルピナを語る際にしばしば登場する「アルピナマジック」という言葉が、否応なしに脳裏をよぎってくる。

本家BMWのキャッチフレーズ「駆け抜ける喜び」を、本質的なレベルからさらにブラッシュアップしたようなハンドリング。そして、極太/超扁平のハイグリップタイヤを履いているとは思えないほどに快適な乗り心地。この二律背反的テーゼを、凄まじいまでの高次元で両立したサスペンションセットによる「妙なる調和」が、1台のクルマとして結集したかに感じられるのだ。

かくしてテストドライブを終えてしまえば、結局はまたアルピナのマジカルな魅力に平伏させられていることに気がつく。しかしその分だけ、2025年末と言われる現行BMWアルピナの終焉が、もはや遠くないことも実感させられてしまう。

だからこそ、BMWアルピナに新車として乗るという僥倖を、記憶に刻んでおきたいのである。

●アルピナD4Sグランクーペ
・車両価格(消費税込):1280万円
・全長:4792mm
・全幅:1850mm
・全高:1440mm
・ホイールベース:2856mm
・車両重量:1970kg
・エンジン形式:直列6気筒DOHCターボチャージャー
・排気量:2993cc
・エンジン配置:フロント
・駆動方式:全輪駆動
・変速機:8速
・最高出力:355ps/4000〜4200rpm
・最大トルク:730Nm/1750〜2750rpm
・0-100km/h:4.8秒
・最高速度:270km/h
・ラゲッジ容量:475L
・燃料タンク容量:59L
・タイヤ:(前)255/35ZR20、(後)285/30ZR20
・ホイール:(前)8.5Jx20、(後)10Jx20

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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