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日産R32「GT-R」は生まれなかったかも!? 幻のR31「スカイライン」4WD化計画が実現していたら日産は倒産していた…【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: AMW編集部/日産自動車

  • R31GTS-R
  • 筑波サーキットで速さを見せつけたR32GT-R
  • 伝説のグループA仕様R32。雨のレースでは強さがより際立った
  • R31スカイラインGTS
  • R31の高性能バージョンであるGTS-R
  • R32GT-Rの要と言っていいアテーサE-TSの解説図
  • R's Meeting 2023のトークショーで笑顔を見せる木下隆之さん(写真中央)。渡邉衡三氏(左)と桂 伸一氏(右)のほか、田口 浩氏とともに登壇

毎年恒例のGT-Rイベントで秘話が飛び出す

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「R31スカイライン幻の4WD」についてです。毎年10月末に開催される姉妹誌『GT-Rマガジン』主催のイベント「R’s Meeting」にて、開発陣から秘話が語られるのも恒例となっています。今回は、R31スカイラインの秘話が披露されました。

R32 GT-Rが誕生していなかったかもしれない!?

世界が記録的温暖化に見舞われています。世間はすでに11月だというのに秋の気配はないようです。熊本では真夏日を記録したといいますし、僕が住む神奈川県も、100年に一度という11月の夏日に見舞われました。これはもう、地球は病んでいるというしかないですね。

とはいうものの、凍えるような寒さよりも暖かいほうが体にも気持ちにもいいのも事実。できれば短パン&Tシャツが正装になってほしいと願っているほどだから、このままずっと来年の夏までぐるっと365日夏が続いてくれても一向に構わないし……、などと無責任に思うのです。

ただし、この夏のような気候のまま1年が巡ることはないとしても、季節感が薄れてしまうのは残念ですね。せっかく四季のある日本に生まれたのだから、巡る季節に感情を刺激してもらいたい。いつ行ったって椰子の木が繁るハワイもいいけれど、緑の葉が赤く紅葉する日本の美も捨て難いのです。

ですが、僕にとって、毎年10月に開催される「R’s Meeting」(GT-Rマガジン主催)は、冬の季語に加えてもいいと思えるほど、冬の到来を感じさせてくれるものなのです。レースシーズンも終了し、気持ちを緩めて集うこのGT-Rの祭典は、GT-Rファンにとっては欠かせないイベントなのです。

閑話休題。

今年の「R’s Meeting」のステージで、R32型の商品主担、R33型商品主管を担当されていた田口 浩氏から、電撃暴露話が飛び出したので報告したいと思います。

1989年に誕生したR32型スカイラインGT-Rは、日本史に刻まれるにふさわしい名車であることに疑いはないと思います。

モータースポーツを席巻するために生を受けたそのマシンは、直列6気筒ツインターボという当時の日本車の中では圧倒的にパワフルなエンジンを搭載し、その驚くばかりのパワーを4輪で受けとめました。それまで四輪駆動モデルはなくはなかったが、クロスカントリーモデルのように泥濘地での踏破性を求めたものや、降雪地帯でスタックしないために……といったオフロード用4WDといった狙いが色濃かったのです。しかしR32型スカイラインGT-Rは、オンロードでの性能を求め、そして成功。名車として崇められるのも納得しますね。

ですが、じつはR32型の前身であるR31型スカイラインGTS-Rが4WDであった可能性があったと言うのです。日産初のスポーツオンロード4WDの称号はR32型スカイラインGT-Rではなく、R31型スカイラインGTS-Rだったかもしれないというのですから腰を抜かすばかりです。

余談になりますが、恒例のR’s Meetingのステージには、お歴々の開発陣が登壇されるのも恒例になっており、かつての開発秘話などをお話しされる。だが、もはや日産を卒業されているからなのか、もう時効が成立しているからなのか、これまで極秘の金庫の中にしまわれてきた思い出話があらわになることが多いのです。今回もそのパターンですかね。

トークショーで盛り上がった筆者

スカイラインGTS-Rは当時国内ナンバー1のスポーツカーでしたが、時代は過激なパワーさらに性能を高めるためにモアパワーが求められました。ですが、これ以上のパワーアップをFRで成立させるのは不可能だと判断し、4WD化を検討したというのです。

ところがです。実際にはR31型スカイラインをベースに4WD化した試作車を製作したところ、前後の駆動トルクが均等だったこともあり、旋回性が致命的に悪い。構造的にドライブシャフトがエンジンを持ち上げるために、車高は恥ずかしいほど高い。操縦性能は、期待したレベルには到底及ばなかったそうです。それまで多額の開発費を投じていたものの、それでプロジェクトはお蔵入りになったとのこと。

「あんなクルマを出していたら日産は倒産していたかも……」

なんて冗談を口にする関係者もいたとかいないとか。

そこでの挫折がその後継モデルとなるR32型スカイラインGT-Rに搭載される前後トルクスプリット式アテーサE-TSの完成につながるのですから、あながちその挑戦は失敗だったとは思えないのですが、4WDのスカイラインGTS-Rは幻で終わったのです。

日産に飛躍の可能性を与えたのは、じつはR32型スカイラインGT-Rではなく、R31型スカイラインGTS-Rだったかもしれません。そう思ってあらためてR31型スカイラインGTS-Rを眺めると、郷愁に浸ることができます。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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