足まわりにも手を加えて運動性能も向上
リアにメルセデス・ベンツのダイアゴナル・スウィングアクスルを採用したことも注目に値し、旧式のスウィングアクスルと比較して明らかにキャンバーの変化が少なくなり、ワインディングロードでのハンドリングはメルセデス・ベンツ特有のニュートラルに近い好ましい弱アンダーステア特性を示した。
高性能な280CEでは、さすがにスタビライザーを強化するなど、ツインカムエンジンの速さに対応する仕様であったが、セダンでは自然なロールを示すセッティングで、走りのクオリティは相当なものだった。
ドライバーにとっての最高のプレゼントは、より配慮の行き届いた運転席のレイアウトである。メルセデス・ベンツのインターミディエイトがこんなにもダイナミックなムードを押し出してきたのはこれが初めてのことだった。それまでの「Sクラスの小型版を造っておけば誰も文句はなかろう」と言わんばかりの傲慢さがなくなった。
しかし、もっとも評価すべきは、このモデルから明らかにこれまでとは違う、実力の高いセーフティパッドの材質を随所に配し、吟味されたダッシュボードの材質を採用するなどして、事実、抜群の衝撃吸収能力を発揮したことだ。永年安全性を唱えてきたメルセデス・ベンツが遂に本領を発揮しはじめたのである。
ところで、ギリシャのタクシードライバーであるサキニディス氏の1976年製240Dは、エンジンを11回も載せ替えつつ、1台の車両で累計460万Kmを走破した記録がある。いかにコンパクトなシャシーおよびボディが強靭であるかを証明するものだ(2004年にはメルセデス・ベンツミュージアムに展示)。
筆者が1972年にヤナセへ入社して初めて乗った店用車はメルセデス・ベンツ300Dで、エンジンは当時として画期的な5気筒ディーゼルエンジンを搭載しパワーがあり、静かで取り扱いのしやすいサイズであった。特に、メルセデス・ベンツの派手さを控え、その質実剛健なクルマ造りには深い感銘を受け、その印象はいまだに残っている。
このコンパクトなW114/115は、外装では高品質感を、内装には安全性を感じさせてくれるトータルバラスのとれたモデルである。