約1000万円以上の整備を受けオークションへ
レヴォクロミコを採用した最も大きな理由はやはりエアロダイナミクスにあり、ソフトトップを採用したモデルでは避けることができなかった空力面での不利を、この回転式ルーフは一気に解消してくれたのである。
もちろんその代償として、車重はベースの575Mマラネロと比較して60kgほど増加してしまったが、そもそもラグジュアリーな走りを求めるカスタマーが多い、このようなスタイルのクルマに、いかにフェラーリとはいえ、そこまで細かい運動性能の違いを語る必要はなかったのだろう。
ちなみにこのスーパーアメリカの最高速は320km/h以上。これは当時、最速のロード・オープン・ベルリネッタだとフェラーリは主張した。
フロントに搭載されるエンジンは、575Mマラネロのものと変わらない5.7LのV型12気筒自然吸気だが、最高出力は540psにまで引き上げられている。組み合わせられるトランスミッションに2ペダルのF1マチックと、オーソドックスな3ペダルの6速MTがあったのもこの時代の魅力。生産は2005年と2006年に限定599台で行われたが、今回パリ・オークションに出品されたのは、そのうち43台しか存在しない6速MT仕様である。
走行距離は1万5157km、マニュアルとツールキットはもちろん付属しており、新車でオーストリアに出荷されたこのモデルは、2023年2月にはフェラーリ・ディーラーで合計6783ユーロ(邦貨換算約1000万円)相当の整備を受け、今回のオークションに臨んでいる。
主催者のRMサザビーズはこれに60万~80万ユーロ(同9600万円~1億2800万円)の予想落札価格を設定したが、今回は残念ながらこのスーパーアメリカは落札に至ることはなかった。そもそもスーパーアメリカの新車価格は、ベースの575Mマラネロより25%ほど高い設定だった(およそ3000万円少し)。今後の売買成立には大いに期待したいところだ。