やっぱり看過できない? F512 Mの希少性
先ごろRMサザビーズ「PARIS 2024」オークションに出品されたのは、1994年から1996年の間に製造されたF512 Mの中でも最終期にあたる、1996年にマラネッロ本社工場をラインオフした個体。
ドイツ・バイロイトのフェラーリ正規代理店「アウトハウス・イセルト(Autohaus Isert)GmbH」社のオーダーにより、「ロッソコルサ(レーシングレッド)」のボディカラーに「ネロ(黒)」本革レザーのインテリアを組み合わせた、もっとも根強い人気を誇るカラーリバリーで仕立てられた。
古い時期のヒストリーについては明かされていないものの、2015年11月に現オーナーのもとに譲渡され、1カ月後には1万3097ユーロ相当のメンテナンスとサービスを受けたことが判明しているようだ。
また、2016年9月には「フェラーリ・クラシケ」の認定を受け、レッドブックのコピーをヒストリーファイルで確認することができる。2018年5月にはさらに1650ユーロに相当する作業が、シュトゥットガルト近郊ベーブリンゲンに本拠を構えるフェラーリのオフィシャルディーラー「ゴーム・ベーブリンゲン(Gohm Böblingen)」社で行われた。
そしてオークション出品直前の2024年1月には、同じフェラーリのワークショップに戻され、合計9128ユーロの整備を受けた。これらの履歴については、車両に添付されるオーナーズマニュアルと、8つのスタンプが入ったサービスブックが証明している。
RMサザビーズ欧州本社は、出品者である現オーナーとの協議のうえ、25万ユーロ~35万ユーロという、かなり強気かつ範囲の広いエスティメート(推定落札価格)を設定。
そして迎えた1月31日、パリ・ルーヴル宮の「サル・デュ・カルーゼル」を会場として行われた競売では、エスティメートに届く30万8750ユーロ、日本円に換算すると約5030万円という、出品者側およびRMサザビーズ側にとっては想定内の落札価格で、ぶじ競売人の掌中の小槌が鳴らされることになった。
ルックス上の変更点では好き嫌いが二分するF512 Mながら、やはり7177台が生産されたというテスタロッサの相場の約2倍、2280台の512TRに対しても大幅に高い相場価格は、この最終モデルが圧倒的に希少であること。あるいはフェラーリの名作テスタロッサ・ファミリーの最終進化形であるという歴史的事実が、現在のマーケット相場価格にも影響を与えているということなのであろう。