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【隠れた名車】マツダ「MPV」は90年代USラッパーに愛された! ミュージックビデオに数多く登場して「MPV=イケてる」となった!?

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: MAZDA/AMW

  • マツダ MPV:ヒップホップの大物たちに愛され、音楽カルチャーの一端を担った。写真は初代
  • マツダ MPV:2代目は前輪駆動方式や後席スライドドアを新たに採用した
  • マツダ MPV:2代目はヘッドライトやバンパー、グリル類のデザインを変更。写真は欧州モデル
  • マツダ MPV:2代目の搭載エンジンはV6が廃止され、全車2.3Lの直4に変更された。写真は欧州モデル
  • マツダ MPV:2代目のインパネは実用性を重視したデザイン。写真は欧州モデル
  • マツダ MPV:2代目の乗車定員は7名
  • マツダ MPV:広い室内と余裕のあるラゲッジスペースを確保する。写真は2代目
  • マツダ MPV:2代目の2列目シートは前後左右に動く仕様になっている
  • マツダ MPV:2代目の3列目シートは床下への完全格納が可能。写真は欧州モデル
  • マツダ MPV:初代は1988年〜1999年まで販売され、ロングセラーモデルとなった

1990年代のとある音楽シーンで流行したマイナーな国産ミニバン

マツダ「MPV」は1988年に北米をターゲットとしたミニバンとして発売され、1990年から日本でもアンフィニ店での販売がスタートし、2度のモデルチェンジを経て2016年に生産が終了しました。国内ではトヨタ「エスティマ」やホンダ「オデッセイ」などの後塵を拝し、ややマイナーな存在であったことは否めないでしょう。そんなMPVは、1990年代のアメリカのとある音楽シーンで支持を集めていました。

東海岸ヒップホップシーンのMVに登場

成功を収めたミュージシャンのクルマと聞いて想像するのは、フェラーリやランボルギーニといったスーパーカー、ロールス・ロイスのような超が付くレベルの高級車だ。日本へ上陸した直後の新車価格が300万円台の半ばだったマツダ初代「MPV」は、決してチープじゃないものの、彼らとは縁がなさそうに感じてしまう。

調べてみるとたしかにミュージシャン全般に共通した話ではないようで、東海岸を中心とするヒップホップ界隈が中心だった模様。ミュージック・ビデオなどからMPVへの愛が伝わる著名なアーティストを挙げると、グラミー賞の最優秀ラップ・パフォーマンス賞にもノミネートされたファット・ジョー、1990年代を代表する伝説的ヒップホップクルーのウータン・クラン。ほかにも1997年に24歳という若さで暗殺された後も高く評価され続けるノトーリアス・B.I.G.、そして西海岸の同じく悲劇的な最後を遂げてからも多くのアーティストに影響を与え続ける2パックなどだ。

初代MPVは中古市場でも今や絶滅の危機

アメリカでも日本でもマジョリティといえる存在ではなく、いささかマイナーなMPVに彼らはなぜ惹かれたのだろう。いわゆるスーパーカーや高級車は富の象徴であり分かりやすいカッコよさなのに対して、シンプルかつ無骨なスタイルでトヨタ「エスティマ」やホンダ「オデッセイ」に比べて日の当たらないMPVが、富と名声を手に入れてからもなお我が道を突き進んだミュージシャンらの琴線に触れ、その生き様に共感した人たちも「MPV=イケてる」とのイメージを持ったのではないか。

もちろん憧れだけでブームが起きたわけではなく、クルマとしての魅力も大いにあったに違いない。知名度や販売台数ではライバルたちに及ばなかったものの、3000ccのV6エンジンは必要にして十分な動力性能で、エッジの立ったボディや大きな窓は運転しやすさに直結し、ニューヨークのような都市部でも使い勝手がよかったはず。

またMPV(マルチ・パーパス・ビークル)の名が示すとおり、駆動方式はFRをベースにした4WDで高い走破性能を誇り、今でいうクロスオーバーSUVの先駆け的な存在でもあった。さらに乗車定員は7〜8名と余裕がありラゲッジも大容量。ドラッグを運搬するのに便利だったとの話も一部で囁かれており、そんなアウトローな匂いもブームを後押ししたのかもしれない。

ヒップホップの大物たちに愛され、音楽カルチャーの一端を担った初代MPV。現在の日本に置ける中古車はどんな状況だろうか。いくつかの検索サイトでチェックしたところ、2代目や3代目はそこそこあるが初代はゼロ。それどころかアメリカでも見つかるのは2000年代のモデルばかりで、LV系と呼ばれる初代は驚くことにひとつもヒットしなかった(執筆時)。たしかに生産を終えてから25年が過ぎ、街で見かけることもほとんどない。今や絶滅の危機に瀕しているといっても過言ではなく、状態のいい個体はもはや文化財と呼べるレベルかも!?

【動画】ウータン・クランの名曲「CREAM」に登場するマツダ「MPV」を観る

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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