名作「エボII」を25歳の頃に購入
1984年から1996年まで開催されたツーリングカーレースといえば、ドイツツーリングカー選手権(DTM)でしょう。DTMは量産車をベースとしながら独自のレギュレーションを採用し、年を追うごとにボディもメカニズムもエスカレートを重ねていき、さまざまなメーカーが威信をかけて市販車ベースのレースマシンを開発。そんなレースにおいて、異彩を放ったメルセデス・ベンツ「190E 2.5-16 エボリューションII」を紹介します。
圧倒的な強さを見せつけた「エボII」
メルセデス・ベンツ「190E 2.5-16 エボリューションII」は「エボII」の名で親しまれ、DTMでは1990年の第7戦のニュルブルクリンク戦から参戦して圧倒的な強さを見せつけた。AMGワークス本気のマシンは、当時のグループAレーシングカーに許されたスポーツエボリューション規定を積極的に活用し、BMW「M3」、フォード「RS」を力でねじ伏せるべく開発したモデルであった。
速さの均等化を図るためボディワークはエアロダイナミクスを追求し、フロントは低く突き出したスプリッターの造形がとくに印象的。サイドはティアドロップ形状のオーバーフェンダーが独特のフォルムを作り出していた。そんな圧倒的な速さを誇った190E 2.5-16 エボリューションIIに惚れ込んだのが郡司智之さんだ。
郡司さんは1995年にこの190E 2.5-16 エボリューションIIをヤナセで中古購入。当時25歳だった郡司さんは、購入する気もなくカーセンサーに掲載されていた個体を見たくてお店を訪れた。そこからお店のスタッフといろいろと話しているうちに、もし買えるようなら購入したいという気持ちに変わって値引き交渉。
若かったのでお金がないながらも、ローンを組んで買ってしまったという。ちなみに、この時の郡司さんは結婚して1年目。何かとお金がかかる時期だったが、広い心を持つ奥さんの理解もあって無事に購入する願いが叶った。だからこそ、所有して29年になるが、今でも大切に乗り続けているという。
購入時の総走行距離はたったの1000キロ
購入してからわかったことだが、このクルマの前所有者は大手企業で、どうやら麻布自動車との付き合いで購入した車体だったらしい。そのまま会社の駐車場で保管されていた車体だったので、走行距離も短く、郡司さんが購入した時はたった1000kmしか走っていなかったそうだ。そういう意味でもアタリの中古車だったと話してくれた。
基本的にオリジナル状態をキープしているが、シートは運転席と助手席を真っ赤なスパルコ製のバケットに交換。ステアリングはパーソナルのバックスキンに交換してレーシーなコクピットを作る。
ちなみにこの190E 2.5-16 エボリューションIIは希少車としても有名。その生産台数はたったの502台である。そのため、すでにコレクターズアイテムの領域に入っていて、現在の価格は4000万とも5000万ともいわれている。当時はこんな金額になるとは考えていなかったが、それが現実となると、本当に若い頃に無理して購入して良かったと感じるに違いない。奥さんにも感謝である。
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