絶滅が危惧される在来哺乳類の保護に貢献
ロールス・ロイスの見習い社員たちが、英国で絶滅の危機に瀕している希少なヨーロッパヤマネを保護する木製巣箱を設計・製作しました。この取り組みはグッドウッド・エステートとの長期的な環境パートナーシップの一環として実施され、木製巣箱は新たな森林地帯におけるモニタリングおよび管理プロジェクトで使用されます。同社の生物多様性に対する取り組みについて見ていきます。
巣箱には耐久性があるオーク材を採用
ヨーロッパヤマネはイギリスに生息するヤマネの唯一の種で、体長6〜9cm、尾の長さも同じくらいで体重は通常25g前後と小さな生き物である。イングランド南部とウェールズに最も多く生息しているが、近年その個体数は激減しており、2009年から2018年の間に52%減少したと考えられている。その主な原因は、生息地である原生林や生け垣の消失と分断である。これに加えて、ヨーロッパヤマネは夜行性で樹上生活をする生き物であるため、その姿を目撃することは非常に困難である。
見習い社員たちは巣箱の適切な形状と寸法を決定するために、さまざまな野生生物保護団体と連絡を取り合い、詳しい調査に基づいて設計を行った。最も重要なのは、入口の穴がヨーロッパヤマネが入り込めるほど十分に大きく、その一方でフクロウ、アナグマ、飼い猫などヤマネの多くの捕食者を遮る必要があった。
そこでチームは、ロールス・ロイスのデザインと施工のセンスを活かしつつ、耐久性があり、無害な素材を候補にあげた。最終的に選ばれたのは、長寿として伝説的なオーク材だ。この美しい木目を際立たせるために柾目に挽くと条線がとくに目立ち、「レイフレック」と呼ばれるきらめく虹色の表面効果が生まれた。
巣箱は屋根用フェルトで仕上げられ、天候から保護し、耐久性を高めている。現場視察の際に見習い職人たちはグッドウッド・エステートの林業責任者と面会し、ヨーロッパヤマネが好む生息地の種類や、新しい森林地帯への巣箱の設置方法について学んだ。
設置するもまだ生息している証拠は見つかっていない
巣箱はハシバミやその他の広葉樹のエリアに設置され、ヨーロッパヤマネが安全な隠れ場所に登るために利用するスイカズラやツタなどの低木が密生している。このような有望な条件にもかかわらず、今日までこの地域にヤマネが生息しているという決定的な証拠が見つかっていない。
ヨーロッパヤマネは1981年の英国の野生生物および田園法により保護対象とされており、故意に殺傷したり、傷つけたり、捕獲することは違法行為である。この保護措置は、ヨーロッパヤマネが避難場所や保護のために利用する場所や構造物にも適用され、新しいロースル・ロイスの巣箱も含まれる。
AMWノミカタ
本文中にもあるように、ヤマネの減少の大きな要因は原生林や生け垣の消失と分断である。山梨県北杜市ではヤマネを轢死させないために路面に出ずに道路を渡れるよう「ヤマネブリッジ」や「アニマルパスウェイ」が架けられているほか、森林を分断しないよう1997年に切土工法を止めて、森を残す「ヤマネといきものトンネル」が建設された例もある。
ロールス・ロイスはまず巣箱を作り、この地域でのヤマネの生息を確認する取り組みから始め、そしてヤマネが生息できない原因を特定し、それに対処することでこの生物や周辺環境を改善してゆこうという計画である。ヤマネから始まるこの取り組みは他の動植物にも生態にも大きく関係する。
ロールス・ロイスの調査によれば、約16万9970平方メートル(42エーカー)に及ぶ本社の敷地と隣接するグッドウッド・エステートには、英国で最も重要な哺乳類、爬虫類、鳥類、昆虫、植物が生息していることが明らかになったという。先日、本社周辺の遊歩道を整備し近隣住民の生活環境を改善したように、同じエリアに住む動植物に対しても「隣人」として同じようなサポートを続けるロールス・ロイスの姿勢に感服する。