6速ATのリズミカルなフィールがフロンクスの特徴
ということで、先に走りの面からだが、日本仕様に載る1.5L 4気筒エンジンは、スズキではこれをハイブリッドとしてエンブレムをまで貼り付けているが、言ってみればマイルドの中のマイルドハイブリッドで、助手席下に収まる6Ahという小容量リチウム電池で発電機を兼ねたわずか2.3kWのモーターを駆動するもので、モーターのみでの駆動もない。
メーター内で表示できる駆動状況とバッテリー残量を示すグラフィックでは、バッテリー残量を5セグメントに分けているが、下から2つまではモーター駆動は一切行なわなくなる。そもそもバッテリー容量が少ないので、回生時間が短い市街地走行などではモーターのアシストはすぐに無い状況になる。
ただバッテリー残量が3セグメント以上の場合、低速域の緩加速や、同様にちょっとした上り勾配での速度増加の際などには、モーターアシストによる体感的にも知れるくらいの軽い押し出し感は得られる。アイドリングストップ状態からのエンジン始動もベルト駆動によるので、セルモーター音が無く振動も小さいといったメリットもある。このレベルのハイブリッドシステムだからこそ、少ない価格転嫁で済むと納得すべきかもしれない。
トランスミッションは、このクラスではマツダとともに珍しく6速ATを採用している。スズキのCVTは小トルクに対応したものしか持たないのが理由のようだが、良くも悪くもこれがフロンクスの走り感を特徴づけている。
ステップシフトによる変速は、たまに唐突なショックをもたらすことがあったりする一方で、車速とエンジン回転数に応じた明確な変速を伴うことでリズミカルな走行感覚を備え、CVTのようなエンジン音が速度や加速度に比例せずに変化するといった曖昧感がないので、とくに旧来からのクルマの走り感を望む人には馴染みやすい。ただし、この走りからは「自動車にとって100年に一度の変革期」を感じさせるといったことは皆無だが。
穏やかなスロットル制御は知性的でもある
そうした中、今回の連日の日常使いで知ることになった点として、最近では珍しいほどのアクセルペダルの踏み込み初期領域のゆったりとしたスロットル制御があった。アクセルペダルをゼロ領域から踏み込む際に、あくまで感覚的にだがストロークが40mmくらいまでの間はパワーを立ち上がりを意識的に抑え込んでいる感覚だ。しかも、この領域は踏み込み加速度を速めてもあまり変化がない。
もちろん、これを超えて踏み込めばパワーも出してくるし、必要に応じてすぐにダウンシフトも行うのだが、とくに最近のちょっとアクセルを踏み込むだけでグイと押し出し感を演出するようなクルマに慣れている人には、レスポンスが鈍いとか、パワーが出ないというように捉える人も少なくないように思う。
スポーツモードを選択しても、基本的にこの特性は維持されるが、個人的にはこのスロットル制御のあり方は知性的にも感じる。ふだんは穏やかな動きが基本で、必要な時に必要なだけ踏み込むことで明確に反応させるというのは、もっさりとしたアクセル領域に多少の馴れは求めることになるが、ドライバーの操作を尊重したものと思えるからだ。
一方で標準で備わるパドルシフトは、とくに下り坂でのエンジンブレーキの減速度の調整や、ワインディング等でちょっとしたスポーティな走りをしたい際などでも有効で、最高出力101ps(FFの場合。4WDは99ps)のエンジン性能および感覚性能も平凡で、エンジン騒音レベルもクラスの平均的なところに思えたが、心地よく走らせる要素は備えている。
車重はFF仕様の1070kgに対して4WD仕様は1130kgと60kg増える。この大人1人分の差が、初期加速からしてやはりFF仕様の方が軽快だなと思わせるくらいの違いはもたらしていたが、1名乗車においては、箱根周辺のワインディングなどでもとくに不足感を覚えることはなかった。
燃費は同じインド生産のホンダ WR-Vより確実に優秀
燃費はさすがにフルハイブリッドのような常用域での燃費は期待できず、街中での好燃費はあまり望めない。日中の都内近郊と都心部との往復といった平均速度の低い状況では、メーター表示で知る限り、2WDはせいぜい13km/L台、4WDでは12km/L台といったところに留まった。
今回はFF仕様と4WD仕様での走行条件や距離も異なるのであくまで参考程度だが、計650kmほどの走行で2度給油した4WD仕様では、満タンからトリップメーター490kmの時点で燃料残量警告灯が点灯。その際のメーター表示で平均燃費17.1km/L、直後の給油における計算値で16.2km/Lだった。このあたりが、日常での短距離とちょっとした長距離を組み合わせた平均的なところかもしれない。ちなみに、燃料残量警告灯は残り約7Lで点灯することが知れた。
2WDは3度の都内間往復や箱根往復等での350km程度の走行で、メーター上での平均燃費は途中の最良値で20km/Lを超えることもあったが、最終的には18.1km/Lであった。いずれも、季節柄エアコンはオフにしていたこともあってか、WLTCの数値にも近かったが、少なくとも同クラスSUVで同じくインド生産のホンダの「WR-V」と比べるならば、確実に優れた燃費性能を示した。





















































