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「買う前に読む」スズキ「フロンクス」の本音インプレ…辛口モータージャーナリストが1000キロ走ってジャッジ!「価格と内容のバランスレベルが高い」

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TEXT: 斎藤慎輔(SAITO Shinsuke)  PHOTO: 宮越孝政(MIYAKOSHI Takamasa)/斎藤慎輔(SAITO Shinsuke)

  • スズキ フロンクス:ダイナミックなクーペスタイルSUVとしてデザインされた
  • スズキ フロンクス:デイタイムランニングライトと兼用のターンシグナルランプとヘッドランプとが離れていることで、夜間ヘッドランプ点灯時でもフロントウインカーの視認性がとても高い
  • スズキ フロンクス:スズキ車としてはアクが強めのデザイン
  • スズキ フロンクス:堅牢さを表現したというホイールに履くタイヤは195/60R16
  • スズキ フロンクス:このクラスではオプション扱いが珍しくない全方位モニターも標準装備だ
  • スズキ フロンクス:インパネセンターの上部に位置する9インチHDモニター
  • スズキ フロンクス:スマートフォン連携メモリーナビゲーションも標準装備される
  • スズキ フロンクス:ダッシュ右側に各種スイッチが配置される
  • スズキ フロンクス:トランスミッションは、このクラスではマツダとともに珍しく6速ATを採用している
  • スズキ フロンクス:後席にもUSB端子が備わる
  • スズキ フロンクス:前席はシート自体の出来が好ましいこともあって、フロアからの多少のブルブル感の伝達を除いては快適性は高い
  • スズキ フロンクス:後席は、頭上に少し圧迫感はあるものの足元は4WD仕様でも変わらず広く確保されラクな姿勢で座れる
  • スズキ フロンクス:ラゲッジ容量は210L。ラゲッジボードを取り外せば290Lとなる
  • スズキ フロンクス:ラゲッジ容量は210L。ラゲッジボードを取り外せば290Lとなる
  • スズキ フロンクス:後席は60:40分割可倒式
  • スズキ フロンクス:後席を全て倒した場合、荷室長(奥行き)は1380mmまで確保できる
  • スズキ フロンクス:力強さとたくましさをテーマとしたコクピット
  • スズキ フロンクス:4WD仕様では専用モードスイッチが備わる
  • スズキ フロンクス:メーター内には駆動状況とバッテリー残量を示すグラフィックが表示される
  • スズキ フロンクス:1.5Lの直4マイルドハイブリッドは、FFで最高出力101ps、4WDは99psというスペック
  • スズキ フロンクス:雪道、氷雪路では、思いのほかに後輪への駆動レスポンスが速いこと、安定性においてはグリップコントロールの有用性も確認できた
  • スズキ フロンクス:ボディサイズは全長3995mm×全幅1765mm×全高1550mm、ホイールベース2520mm
  • スズキ フロンクス:2WD仕様(写真)は350kmほど走行してメーター上の平均燃費が18.1km/L。4WD仕様は650kmほど走行してメーター上の平均燃費17.1km/Lだった

コスパで人気のコンパクトSUV「フロンクス」その走りは果たして?

5ドアの「ジムニー ノマド」が発表から数日で5万台の注文が殺到し受注停止になるなど、インド生産のスズキ車が注目を集めています。2024年10月に国内発売されたコンパクトSUVの「フロンクス」もインド生産かつ圧倒的なコスパで好調ですが、充実の装備内容とともに気になるのは、走りは「安かろう」なのか? ということ。モータージャーナリストの斎藤慎輔氏がFFと4WDの両仕様で街中からワインディング、雪道までトータル1000kmを試乗して、詳細にレポートします。

今やスズキの最重要マーケットであるインドで生産

スズキは、インドでの4輪車累計生産が3000万台を超えている。一番売れるところで作って売る。スズキの戦略は明快だ。

もっとも、1982年と早々に他社がまだ強い興味を示していなかったインドに進出したのは、スズキが主力としていた軽規格のようなスモールカーは、先進国では受け入れてもらえるところがなかったからというのが、2024年12月25日にご逝去された、当時の取締役社長、鈴木 修氏の本音だったようだが、それが今ではスズキの4輪事業を支える最重要市場になっている。

全長4mに収まるコンパクトなクーペスタイルSUVの「フロンクス」は、そのインドのグジャラート州ハンサルプールにある工場で生産される。日本で2025の1月末に発表、4月の発売を前に注文が殺到し、わずか数日で受注停止となった「ジムニー ノマド」もインド製だが、こちらはグルガオン工場で生産されている。

フロンクスは現地では2023年4月に発売されたが、日本では2024年6月に、日本仕様プロトタイプによる、媒体やジャーナリストに向けた試乗会をクローズドコースで開催している。その結果、予想される価格とも照らし合わせて前評判が高まっていた。

「安すぎたんじゃ?」と言われるほどの高コスパ

ということで、2024年10月の正式発表で注目されたのはまずは車両価格だった。日本向けは設定されたパワートレイン/トリムレベルともにシンプルで、2WDと4WDともに1種のみ。装備内容も基本同一で、2WDが254万1000円(消費税込)、4WDが273万9000円(消費税込)である。ちなみにフロンクスはインドの他、中近東、アフリカ、中南米等でも販売されるが、4WDは日本向けのみの設定だ。

2WD/4WDともに1グレードでの展開とあって、標準装備の内容はBセグメントとしては潤沢で、現状で望まれる予防安全や運転支援の装備はひと通り備えられ、インパネセンターの上部に位置する9インチHDモニターや、このクラスではオプション扱いが珍しくない全方位モニターやスマートフォン連携メモリーナビゲーションなども全て標準だ。

そもそも、インドで生産するから車両価格が抑えられるのかという話でいえば、現地でのコストは多少安いかもしれないが、それも材料費や人件費の向上などでその差が小さくなってきているうえに、輸送コストなどを含めると、安くできる要素はあまりないはずとのこと。つまり、意図して抑えた価格に設定するかどうかに、多くがかかっているわけだ。

これは、発売後にスズキ広報部の方から伺った話だが、これはお安い、お買い得みたいな声が多く響いたことからか、現社長から「(価格設定が)安すぎたんじゃないのか」と言われたとか。何でも価格は上がるばかりの中にあってのスズキらしい一面ではある。

それだけに、2024年6月のフルモデルチェンジからわずか6カ月で(塗装品質の向上という改良は伴っているものの)しれっと全グレード一律16万5000円高となる価格変更を行ったホンダ「フリード」のようなことが、せめて短期間のうちにはないことを願いたい。

ベンチマークは同セグメントの欧州車!?

さて、ワインディング路が主体のクローズドコースで開催されたプロトタイプでの短時間の試乗においては、おおむね好ましい印象を受けていたフロンクスだが、発売後の千葉県幕張新都心周辺での市街地走行を主とした試乗会では、価格に対する装備類の充実面ではやはり褒められるべきと思えた一方で、走りにおいては気になるところも見受けることになった。

ということで、きっちりしっかり確かめるべく、FF/4WDモデルのどちらも数日間から1週間ほど手元に置かせてもらい、街中日常域から高速道路、ワインディングまで、走行距離では2モデル計で1000kmに満たない程度ではあったが、試乗会では本来の実力を知れなかった燃費や、4WDの性能域までの確認を行えた。

インドでは数々の賞を受賞し、販売も絶好調というフロンクスだが、日本で販売するにあたり、当然として仕向地別の変更を施している。これがあたかも特別なことのように記しているものも多く目にしたが、どのメーカーにおいても、たとえば逆に日本から各国に輸出する際には仕向地別に法規適応だけでなく、走行環境はもちろん、市場の指向を考えた変更を施すのはむしろ当たり前のことだ。

ただ、フロンクスの場合、車両設計の要となるボディサイズにおいて、全高がクーペルックSUVとしても低めの1550mmに抑えられているのは、日本での立体駐車場の事情を考慮したとのことなので、開発当初から日本への導入を考えていたということ。日本向けだけの4WDの設定も、世界の中でも実用車の4WD仕様の需要が特別に多い日本では、その有無が販売に強く影響をもたらすことを考慮したものだし、他の生産車から流用できる部品が多いこともそれを可能にしている。

なにより母国で売るのだから、市場が求めるものは熟知していて当然で、このあたりは、インド生産で日本に導入した初代「バレーノ」が、思惑通りにはまったく売れなかった失敗も教訓になっていそうだ。その初代バレーノは、日本向けへの配慮に欠けたという面もあったにせよ、正直、個人的な評価としてとくに動的な質で散々ともいうべきものだったので、初代バレーノで初採用された新プラットフォームを、日本未導入の2代目バレーノとともに踏襲しているフロンクスには不安もあったというのが本音だ。

ちなみに、開発陣に、走りにおいてベンチマークとしているクルマはありますか? と尋ねたところ、しばし間をおいて、車名やメーカーまでは答えてもらえずに、単に「(同セグメントの)欧州車」ですとのことだった。だとすれば、走りの質、とくに操縦安定性、乗り心地等については、それ相応に見させていただくことも許されそうだと思えた。

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