ジューク・ジョイントの老舗ブルーフロント・カフェへ
最初の取材先は、ミシシッピ州ベントニアという町にあるブルーフロント・カフェだ。綿花畑で働く黒人労働者たちが集まり、自然発生的にライブが行われてきた。こうしたミシシッピ・デルタ特有の形態の店をジューク・ジョイントと呼ぶ。スティーブン・スピルバーグの映画『カラーパープル』でも、ジューク・ジョイントが効果的に描かれていた。もう現存している店も少なくなっているが、ブルーフロント・カフェは数少ない生き残りのひとつだ。
営業は夜だけだというが、店の中に入れてくれた。店のオープンは1948年。店内はまさに時が止まったようだ。いや、現代人の尺度とは異なる速度でゆっくりと進んでいるのか。
かつて、この地域の8~10月は綿の花で雪が降ったように真っ白になったという。今は、それが米、トウモロコシ、豆といった収益性のいい作物にとって代わられた。それでもブルースを愛する人たちが集まり、夜ごとにギターを弾く。デルタブルースは過去の遺産のように思われているが、現役のブルースマンもいる。じつはゆっくりと生き続けているのだ。
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