雪上でも適切にアクセルコントロールできる安心感
ここから乳頭温泉に向かうと、次第に期待していたとおりの圧雪のワインディングに変わる。アルカナのE-TECHが好ましいのは、低負荷域のEV走行域からエンジンが作動する負荷と速度域に達した際に、アクセルワークに対して感覚的にリンクするエンジン回転の変化が伴うことだ。
フルハイブリッドのパイオニアかつ代表的存在であるトヨタのTHSは、効率面ではたしかに優秀だが、電気CVTとの組み合わせによるエンジン回転の曖昧な変化を頻繁に伴いがちだ。とくに排気量の小さなエンジンと組み合わせた車種においては、それが不可避なのだが、そこはドッグクラッチと多段ミッションを備えたアルカナE-TECHは、ズルズルと曖昧にエンジン回転が上下に変化する感覚は持たない。これが快活な走り感をもたらす。
もっとも、パドルシフト等による能動的な変速システムは持たないうえに、いったいエンジン側が今は何速で、モーター側も2段のギアのうちどちらを使った状態にあるのかを知る術もない。つまり、積極的に細かく変速を操ることはできないのだが、雪上でもアクセルワークと負荷に応じた駆動力が適切に得られることから、コントロールできる安心感があるのがありがたく思えるのだった。
巧みなトラクションコントロールで意思どおり前に進める
乳頭温泉郷に近づき、今夜の宿泊先ではないのだが、乳頭温泉を代表する宿でもある鶴の湯にいったん向かう。両脇の雪の壁が3mを超えるほどの狭いつづら折れの雪深い道を進んで行くことになるのだが、そこではちょっとした上り勾配でトラクションコントロールが頻繁に介入してくるほどに、駆動輪の前輪の空転が増すことになる。ここは、とくに前輪駆動の辛いところではある。
私としては願ったり叶ったりの状況ではあるが、こうした場面で知れるのは、トラクションコントロール制御の巧みさだ。タイヤのスリップによる過剰な空転を防ぎ、駆動力を確保することが目的で出力を絞るのだが、前輪駆動にせよ後輪駆動にせよ2輪駆動車にありがちなのが、出力を絞り過ぎてタイヤの空転こそ防げても、必要な、あるいは求める速度が維持できなくなる車両も多い。このアルカナは、絶妙なスリップコントロールを行うことで、車速も維持しつつ駆動力も安定性もバランスを保つので、思ったように前に進んでくれないといったイライラを生じることなく、マイフェイバリット温泉のひとつである鶴の湯の風情ある姿を見に行けたのだった。
鶴の湯を後にして来た道を戻りながら、この大雪の中でもチェーン無しでとくに問題もなく走れることにひと安心しながら、この日に泊まる大鎌温泉に到着した。すると、宿の人が、今日は私がここに来るまでに3台ほどスタックして立ち往生していた、という話をしているではないか。
もちろん、私は発進が厳しくなりそうな路面状況では停止させないといった気は使っていたが、好ましいパワートレインの特性と優秀な駆動制御あっての、苦もない移動だったということのようだ。




















































