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世界初の「衝撃吸収式ボディ」はメルセデス・ベンツが採用! クルマの安全性を戦前から追求してきたパイオニアの歴史とは

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz AG/ウエスタン自動車(Western Automobile)/妻谷コレクション(TSUMATANI Collection)

「ミスター・セーフティ」と呼ばれたベラ・バレニー

オーストリア・ハンガリー帝国生まれのベラ・バレニー(Béla Barényi/1907年~1997年)は、祖父が所有していた貴重な自動車がきっかけで、8歳頃から自動車に強い興味を抱いていた。そして1920年代、ウィーン工科大学在学中に国民車(後年のフォルクスワーゲンと同じ概念)、スポーツカー、ツーリングカーといった独自のコンセプトを考案した。彼の急進的なアイデアは、しばしば教授たちを困らせるほどだったと言われている。

その発想は自動車の将来にとって、優れた先見であった。類まれな才能に注目した当時のダイムラー・ベンツ社の社長、ヴィルヘルム・ハスペル博士はまだ若い彼を主任設計者として迎え入れた。彼は1939年、ダイムラー・ベンツ社に32歳の若さで入社すると同時に、世の中にまだ概念すらなかった「自動車の安全性の研究」に着手した。

自動車が人間を傷つけることなど耐えがたく、絶えず「エンジンよりも先に人間」をモットーに新しい解決策を考え、数々の安全技術を開発し、現在、世界中の自動車が基本とする安全構造のほとんどを考案した。「人間」を中心に新しい解決策を考え、優れた才能だけでなく、そんな自動車への人一倍熱い思いが、彼を「ミスター・セーフティ」と呼ばれる自動車安全性の第一人者に押し上げていった。

メルセデス・ベンツが、自動車の安全性がルールとして確立されるずっと以前より安全性に取り組んでいることはすでに周知の通りである。時は1939年、メルセデス・ベンツの安全技術が本格的なスタートを切った。開発部門内にパッシブ・セーフティ(受動的安全性)の専門部を創設し、当時はその発想すらなかった自動車の衝突安全性の研究に着手した。

「ミスター・セーフティ」であるベラ・バレニーが主任設計者として、当時のダイムラー・ベンツ社に入社し、ジンデルフィンゲン工場の一画で自動車の安全性の研究に着手し、数々の安全技術を開発した。彼がダイムラー・ベンツ社に在籍した34年間に取得した特許は2500件にも及ぶ。そして、彼は当時のことを次のように語っている。

「自動車が少ない当時でも、交通事故は起きていました。ボディは大丈夫か? エンジンは? と人々は高価な車体に心を奪われがちでした。しかし、私が気がかりだったのは何よりも乗員の安否だったのです。また、安全性はセールス・ポイントにはなりませんでした。自動車を買おうとする人たちは、高価な自動車が壊れる話など聞きたがらなかったのです!」

「丈夫な客室を前後の衝撃吸収式ボディ構造で守る」仕組みを導入

先述の通り、1960年代前半に至るまで自動車に対する安全性の理論だった研究・対策の試みはなかったが、すでに1951年にメルセデス・ベンツの技術陣は自動車の安全性理論、すなわち衝撃吸収式前後構造と頑丈なパッセンジャーセル構造の特許を取得した。そして、この構造が今日の全自動車の安全ボディの基本となっている。

1953年には、この世界初の前後衝撃吸収式ボディ構造を採用した量産乗用車「180」を発表(セミモノコック)。その6年後、1959年8月に生産を開始した「W111/220Sb」(通称:羽根ベン)で、前後衝撃吸収式ボディ構造を完成し(フルモノコック)、乗用車のボディ構造に大きな改革をもたらした。

しかも室内はステアリングホイール、インストゥルメントパネル、ドアライニング、アームレスト、サンバイザー等に衝撃吸収材を使用し、埋め込み式ドアハンドル、脱落式ルームミラーをすでに採用。セーフティセルと呼ばれるこの安全車体構造は、乗員が乗る客室の剛性を上げ、その前後構造に衝撃吸収能力を持たせている。

この特許を申請したフルモノコックの元祖といえる「安全ボディ」は頑丈な客室の前後に衝撃吸収構造を持ち、じつはすでに1940年代に試作車を造り、「頑丈だから安全」の一辺倒から「丈夫な客室を前後の衝撃吸収式ボディ構造で守る」仕組みに変えたのである。

とくに、1959年のW111/220Sbは1958年7月2日に登録された特許である2重の安全ドアロックを標準装備。つまり、ドア側のウェッジピンとボディ側のテーパー付きの穴で、ウェッジピンをがっちりと受け止め、ドアを確実に2重ロックし乗員保護をした(1949年には最初のバージョンのウェッジピンドアロックの特許を取得している)。

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