6シーズン目のチャレンジ
アイフェル地方の樹々が芽吹きはじめ、野山には野鳥の美しいさえずりが響く中、春の訪れと共に『TOYO TIRES with Ring Racing』は、あらたな気持ちを胸に、6シーズン目の挑戦となるNLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)の開幕戦に参戦するべくニュルブルクリンクへ再び舞い戻ってきました。第2戦決勝の火蓋が切られる前に、2025年3月21日と22日に開催された第1戦の模様をお伝えしましょう。
若手ドライバー起用で次のステージに
2024年シーズン、ニュルブルクリンクを舞台にしたNLSにおいて、念願のSP10クラスのシリーズチャンピオンを獲得した『TOYO TIRES with Ring Racing』の#171のトヨタ・スープラGT4 Evo。ニュルブルクリンクのノルドシュライフェを舞台に鍛え抜き、精魂込めて開発したタイヤ「PROXES」が、5年越しに念願のクラス優勝を達成し、その奮闘に感涙した事は記憶に新しい。
しかし、それは『TOYO TIRES with Ring Racing』にとって、あくまでこのプロジェクトの通過点に過ぎず、次のステップへと新たに迎える2025年は、トヨタGazooレーシングとタッグを組み、日本のモータースポーツ界を担う実力ある若手ドライバーを起用し、新たな挑戦に一歩を踏み出した。
昨年はトヨタGazooレーシングからこのNLSへ参戦し、既にニュルブルクリンクのライセンス『Permit A』を取得済の中山雄一と小高一斗の両選手は、今季は『TOYO TIRES with Ring Racing』へ移り、SP8Tクラスの#160のトヨタ・スープラGT4 Evoに乗り込んだ。ドイツでも根強いファンがいるスーパーGTだけに、GT500クラスで長年活躍する中山とGT300クラスで経験を積むトヨタGazooレーシングの先輩と後輩の新コンビに注目が集まった。
一方で、昨シーズンの後半からテスト参戦を行っていたSP-Proクラスのポルシェ911 GT3カップを今季はシリーズを通して採用し、次のステップとして新開発プログラムへ向けて本格的に始動。ニュルブルクリンクの公式チーフインストラクターを務めるアンドレアス・ギュルデンを筆頭に、ティム・サンドラーとマーク・ヘネリッチという昨シーズンのSP10クラスシリーズチャンピオンを獲得したベテラントリオが挑む。
毎年NLSのシーズン前半戦は、メインイベントであるニュルブルクリンク24時間レースへ向けて最も重要な準備レースの意味を持つだけに、NLSに参戦する各チームは膨大なチェックリストを用意し、車両走行を通して路面データ収集に余念がない。ニュルブルクリンクはこの日を迎えるにあたり、恒例のアスファルトの張り替えを済ませていた。2024年までに収集したデータを必ずしも全てに活かせる訳ではないだけに、実質的には新たなシーズンが開始すると共に再びデータ収集を始めなければならない。この開幕戦はシーズンを通して最も多忙な一戦である事は間違いないだろう。
まずますの予選結果
早朝のニュルブルクリンクらしい澄んだ冷たい空気の中に響き渡るエキゾーストノートや出走準備に慌ただしく疾走するチームクルーには、初戦に挑む歓びと共に、独特な緊張感に包まれ、その場にいる誰もがこれこそがニュルブルクリンクだと改めて感じさせられるのだ。
午前8時30分、気温は8℃とそれほど低くはないものの、高い標高ゆえ体感気温は低く感じるのが常だ。ニュルブルクリンクは厚い雲に覆われる中で予選が開始したものの、初戦とありサーキット側の準備不足で赤旗が出されて緊張の糸が一旦リセットされるというアクシデントもあったが、幸いにもすぐに予選が再開された。
このNLSの開幕戦では『TOYO TIRES with Ring Racing』に所属する全てのドライバーに課されたのは「確実に完走する事」。それこそが最も重要で困難なミッションなのだ。アマチュアから各自動車メーカーに所属するトッププロドライバーまで116台、数百人規模のドライバーが参戦するとあり、他車との接触やドライブミス等により完走する事自体がどれだけ難しいのかを誰もが知っている。
このNLSの開幕戦は4時間耐久レースとあり、予選+4時間レースを経て無傷・無違反で完走をするプロセスも開発プログラムの戦略の重要な課題のひとつなのだ。
1周が24.358kmという超ロングコースとあり、その標高差や地域性により気候が異なるのだが、アイフェル地方独特の変わりやすい天候の事を、ここを知る日本人らは親しみと憎しみを込めて“ニュルウェザー”と称するのだが、この予選の終了間際には早速開幕戦早々この洗礼を受け、冷たい雨がアスファルトを叩きつけた。
●予選結果 全出走台数116台(2台リタイア)
【SP-PROクラス】総合33位/クラス1位
#347:ポルシェ991 GT3 Cup
【SP8Tクラス】総合34位/クラス2位
#160:トヨタ・スープラGT4 Evo
【SP10 AMクラス】総合53位/クラス4位
#170:トヨタ・スープラGT4 Evo