駆動方式にFRではなくFFを採用した理由は……?
そして何が異なっていたかと言うと、市販されたルーチェは、直4ガソリンエンジンを搭載。リアを駆動するいわゆるFRの駆動方式を持っていたのに対し、S8Pは、ロータリーエンジンをフロントにオーバーハングして前輪を駆動するFWDだったことである。つまりプラットフォームからしてまったくの別物であったということだ。
ご存じのとおり、ロータリーエンジンは直4エンジンと比べると非常にコンパクトでエンジン高が低い。それによって低いボンネットフードが実現され、ウェストラインも低くできた。何故、FWDにしたか、会場に居合わせた現シニア・フェローの前田育夫氏に質問をぶつけてみると……
「とくにこれといった理由はなく、当時は何でもやってみようということだったんですよ
ちょっと眉唾だが、結果このFWDとロータリーエンジンの組み合わせは、のちにルーチェ・ロータリークーペとして実を結ぶことになる。ただし、そのとき搭載されたロータリーエンジン(13A)と、S8Pが搭載していたロータリーエンジンは異なり、S8Pはあくまでもモックアップエンジン(木製だというがプラグコードは存在した)が積まれていた。現実に搭載予定だったエンジンは400ccx2ローターで、名前を付けるとしたら8Aとでも呼ぶべきエンジンであったという。
FWDであるのでプロペラシャフトは存在しない、室内を覗いても剛性確保の若干の盛り上がりはあるものの、フロアはほぼフラットである。エンジンの低さを物語るのは、サイドを通るプレスライン。ホイールアーチを貫通してリアまでそのラインが伸びているのがわかる。しかし、量産型ルーチェではこのラインがフロントホイールアーチのはるか上を通り、その分ボンネットがかさ上げされたことを物語っていた。エンブレムはすべてロータリーをイメージさせる、おむすび型にm(東洋工業当時のコーポレートマーク)の文字をあしらったもの。そしてボディサイドにはdisegno di Bertone(ベルトーネデザイン)のプレートが付いている。
1960年代中盤は多くの日本車メーカーが、イタリアンデザインを採用した。その中でジウジアーロ氏が与えた影響は極めて大きい。今回のカウンシルにもこのクルマを含め4台のジウジアーロ・デザインのモデルが展示されていた。











































