2つの王室をつないだファントムV
大陸を越えて、もう1台の由緒あるファントムVが中東の新しい国家誕生の瞬間に送り込まれた。1966年にマリナー・パークウォードのボディで納車されたこの車両は、アラブ首長国連邦の「建国の父」と称されるシェイク・ザイード・ビン・スルタン・アル・ナヒヤーンによって発注されたモデルである。この車両は、アブダビの統治者としての就任式にも使用され、ドバイやそのほかの首長国との統一交渉において重要な役割を果たした。1971年12月2日のUAE建国式典では、初代英国大使であるジェームズ・トレッドウェル氏を乗せて走った。
さらにその8年後、1979年にエリザベス2世女王がUAEを訪問された際も、この同じファントムVが女王陛下の公式車両として使用され、2つの王室の伝統が交差する瞬間となった。
各国の公用車として活躍
ファントムは、儀式用の車両としてだけでなく、外交の舞台でも長年にわたり控えめながら重要な役割を担ってきた。1965年には、英国政府機関によるロールス・ロイス車の使用が議会で正式に議論され、世界舞台におけるその象徴的な重みを裏付けた。その後、ファントムVはニューヨーク、ワシントン、東京、ニューデリーなど遠方の地で、英国外交官の信頼される使節として活躍した。
そして長年にわたり、ファントムはオーストラリア、クウェート、スペイン、タイ、アラブ首長国連邦など、数多くの国々で公用車としても使用されてきた。
世界の舞台を駆け巡る一方で、より身近な場所でも奉仕してきたファントムは、常に威厳ある存在であり続けている。その象徴ともいえるのが、1959年に発売された全長5.8mのファントムVだ。公式記録は残っていないが、英国のパーキングメーターの法定最小間隔が、この車両の寸法に合わせて改定されたという逸話が残されている。

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2025年はロールス・ロイス・ファントムが誕生してちょうど100年にあたる節目の年となる。この100年間、ファントムが名だたる著名人に愛され、また重要な役割を果たしてきたかが、今回の物語で改めて理解できる。とくに王室との関わりが深く、ファントムIVは王室だけのためにわずか18台だけが生産された特別なモデルだという。
また王室に納められたファントムVは、通常のスピリット・オブ・エクスタシーではなく聖ジョージの竜退治像(St. George slaying the dragon)がつけられていた。このマスコットは、主に女王が乗車する際に取り付けられ、スコットランド訪問時には、代わりに銀製のライオン像が装着されるなど、地域や行事に応じてマスコットが変更されることもあったという。
王室からの特別な要望に応えられるビスポークの技術と経験を持っていたこともロールス・ロイスが国家を代表する車両として選ばれた理由のひとつでもあるだろう。














































