ディーゼルがトラック・バス用と思われていた時代にメルセデス・ディーゼルの特別仕様車を考案
筆者が輸入車総代理店ヤナセの若手社員だった1973年ころに運転していたのは、社用車だったディーゼル乗用車の240D(W115型・通称縦ベン)。エンジンの始動は、スターターノブを1分くらい引っ張り続けて燃焼室をヒーターで暖めてから、さらにもう1段引っ張ってエンジンをかけていた。それに比べると、ガソリン車と同じようにスターターキーを捻るだけでエンジンを始動できるブルーテックの利便性の高さに、改めて時代の進化を感じさせられた。
最後に、筆者が若手だった1970年代の日本市場は、ディーゼルといえばバス・トラックのイメージしかなかった。ところがドイツでは高級車のメルセデス・ベンツがタクシーに使われ、その主力はディーゼルだったのだ。一方で、当時のダイムラー・ベンツ社は「どうして日本でこんな良いものが売れないのか」と、いつも意見のすれ違いがあった。

そこで販促策として、1977年はヤナセのメルセデス・ベンツ輸入25周年ということもあり、ディーゼル車を使った「限定車」を考案。ヤナセオリジナルの限定車を企画・制作することになった。240D(W123型)をベースにボディカラーは当時オプションだったシルバーメタリック、手動式スライディングルーフ、ベロアシートなど、当時としては異例のメーカーオプションを6種類装備して、50台限定で発注した。
加えて日本オリジナルデザインの記念カーバッジ(七宝焼製)、純銀製キーホルダーなどの特製4アクセサリーも装着した。こうして、今まで見たことのないオーナードライバー志向の「メルセデス・シルバー・ディーゼル限定車」が初めて日本で誕生した。今やどのメーカーも限定車は拡販ツールとして一般的になっているが、ヤナセの「メルセデス・シルバー・ディーゼル限定車」は限定車黎明期の象徴とも言えるだろう。








































































