ボルト&ナットに至るまでのフルレストアを実行
そののち博俊氏は、ヨーロッパを放浪する武者修行の旅に出るのだが、2年後に帰国した際、父親がエリートを「ホンダ・インターナショナル・テクニカルスクール(現ホンダテクニカルカレッジ関東)」に寄付していたことを知らされる。
そしてエリートは、長年その学校に保管されることになるものの、1980年に分解されたロータスを現在のオーナーが入手。2018年に英国ケントの「ブシェル・レストレーションズ(Bushell’s Restorations)」に、ボルト&ナットまで見直すレベルのフルレストアを依頼した。
ここで元本田家のエリートは3年間かけて修復され、過去の事故修理の痕跡が適切に修正されたほか、ZF製4速トランスミッションと、「ロールソン・レーシング(Rawlson Racing)」社が「スーパー95」スペックで組み上げた1216ccのコヴェントリー・クライマックスFWEエンジンが搭載された。
FRPボディは、ホンダの歴史に敬意を表した「グランプリホワイト」で仕上げられ、内側のトランクの一部は以前のボディカラー変更を示すために、サンディングされたまま露出されている。また、鈴鹿サーキットでの事故で生じた運転席側の窓枠の傷も同様に残されている。
今回の出品に際して、RMサザビーズ欧州本社では
「タイプ14 ロータス・エリートは、切ないほど美しいデザイン、競技歴、真の希少性を備えたまさに特別なクルマです。この個体はさらに驚くべきもので、現代の世界を形作った先見の明のある自動車の巨匠、本田宗一郎との興味深い初期の歴史を誇っています」
という謳い文句を添えて、7万ポンド~10万ポンド(邦貨換算約1463万円〜2090万円)という、イギリスにおけるオリジナル・エリートの相場価格よりも少々高めのエスティメート(推定落札価格)を設定した。
そして迎えたオークション当日、競売では7万3600英ポンド、現在のレートで日本円に換算すると、約1538万円で競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。
この種のオークションの常として、落札者の指名や素性が明かされることはない。願わくば落札したのはホンダかその代理人であり、いずれは鈴鹿サーキットパーク内の「Honda RACING Gallery」、あるいはモビリティリゾートもてぎの「Honda Collection Hall」にて展示される様子を見てみたい……。そうでなければ、せめて日本人愛好家が落札していてほしいと思うのは、決して筆者だけではないだろう。










































































