ホイールベースを1m延長して車重は180kg増加
『フォルクスワーゲン・クラシックパーツ』発行の証明書によると、元来このVWビートルは1968年10月8日に製造された車両だ。「ブラック」のボディに「ガーラ・レッド」のレザレット・ビニール内装、1.5Lのフラット4エンジンを搭載したスタンダードのタイプ1ビートル1500として、まずはルイジアナ州ニューオーリンズに納車された。
しかし、納車早々にカリフォルニアへと輸送され、「スカラブ(Scarab)」や「シャパラル(Chaparral)」といった伝説的なレースカーのボディワークを担当した、カルバーシティのコーチビルダー『トラウトマン・バーンズ(Troutman-Barnes)』に委託。同社の尽力でホイールベースを約1m延長し、全長は5.15mという印象的な威容を誇ることになった。
この一連の大改造を経て、トラウトマン・バーンズ工場から出荷される際にも、外装周りがフォルクスワーゲン本社の作のように整っていたのは、可能な限り本物のVW純正部品を使用していることに起因している。カスタマイズされたリアドア(フロントドア同様、前方に三角窓がある)やランニングボードも、すべて純正パーツがベースとされていた。
また、1969年10月20日付の仕様書『VW Limo for L.A. Auto Show』には、南カリフォルニアのホットロッドシーンの重鎮2名が、このリムジンの製作に貢献したことが記載されている。LA近郊の『ジュニアズ・ハウス・オブ・カラーズ(Junior’s House of Colors)』がボディペイント、有名なホットロッダー兼ドラッグレーサーのトニー・ナンシーが内装を担当した。
リムジンの伝統的様式にしたがって、後部座席にはボタン留め装飾を施したグレーのイングリッシュブロードクロス、電動パーテーション(仕切り窓)の反対側に置かれた前部座席にはブラックのビニールが使用されている。純正のスチールホイールは、ワイド幅のリムを取り付け、研磨してポリッシュ仕上げとされた。
さらに、48mm径のウェーバー製ダウンドラフト式キャブレターを備えた、より高性能な1600ccの空冷フラット4ユニットが、リムジン化と豪華な内装によって加わった180kgの追加重量を補う、重要な役割を担った。
オークション出品にあたって添付されたヒストリーファイルには、マホガニー材のトリム、折りたたみ式のジャンプシートに挟まれたミニバー、インターコム、カセットプレーヤー付き5スピーカーの『フィリップス』オーディオシステム、防音設備、パワーウィンドウ、そして「ドアマンに合図を送る」ルーフのキャリッジランプが装備されたことも記載されている。その後、このリムジンはリアコンパートメントに『ケンウッド』のヘッドユニットとCDチェンジャーが搭載されるなどのアップデートが施された。
ちなみにヒストリーファイルの注記には、名優ジョン・ウェインが、映画『勇気ある追跡(原題:True Grit)』で最優秀主演男優賞を獲得した1970年のアカデミー賞授賞式にて、彼の送迎に『ロールスワーゲン』が使用されたと記載されているが、この情報についてはカタログ作成時点では裏づけが取れていなかった。


















































































































