高級車レベルの内装などトラックとは一線を画した積載車
1955年当時、メルセデス・ベンツのモータースポーツファンたちは、この高速レーシングカー・トランスポーターに歓喜した。従来のトラックをベースにしたレーシングカー・トランスポーターとは対照的に、このワンオフの高速レーシングカー・トランスポーターは、そのユニークな外観、エレガンス、スピードで群を抜いていた。そしてメルセデス・ベンツのサービス車両の典型的なブルーの塗装と相まって、すぐに「ブルーワンダー」というニックネームが付けられた。
インテリアは長距離の快適さを考慮して設計されている。当時のレーシングカーやスポーツカーに使われていたブルーチェック模様の生地がシートや背もたれ、ドアパネルに採用された。ダッシュボードはレザーでトリミングされ、センタートンネルはファブリックで縁取られている。大型のステアリングホイールの後ろには、レブカウンターとスピードメーターが配置されている。スピードメーターの最高速度は140km/hと刻まれていた。
機能性を重視した作り込みとデザイン性が融合
フロントフェンダーとリアフェンダーは後方に向かって優雅に伸び、空気力学的に効率がよい方法でホイールを包みこんでいる。フロントフェンダーとリアフェンダーは、荷台に流れ込む内側に湾曲したパネルで連結。アクスル間の窪みには、両側にスペアホイールが1本ずつ収納され、斜めに固定されているため素早く取り出すことが可能。非常に巧妙なアイデアとして、スペアホイールのハブキャップに固定用の三脚でしっかりと取りつけられていた。
また、リフトのような機械的な補助装置がない代わりに、このブルーワンダーのホイールのガイドの間に4本の軽量アクセスレールを収納している。地面に降ろす2本のレールを荷台の2本に連結することで、レーシングカーは地上から荷台へのアクセスを可能とする。荷台に固定されたU字型レールによって、レーシングカーは輸送中でもしっかりと固定できるようになっている。
ちなみにホイールベースは3050mm、全長6750mm✕全幅2000mm、全高はわずか1750mmと、ダイナミックなスタイルは「突き進む」魅力を持ち、停車中でも速そうに見える車両であった。
退職したスタッフは次の様に語っている。「私達レーシング部門にとって、この車両は正に恵でした。レーシングカーのセットアップや最後の変更をより慎重に、より少ないプレシャーで完了するために、数時間多く過ごすことができました。同様に損傷した車両や欠陥のある車両はより早く工場に返却し、慎重に多くの時間をかけることができました。レースの後は毎回、車両は分解され、点検され、欠陥部品は交換、修理、または改造され、それぞれのドライバーに合わせて調整されました」と、サーキットから工場までの移動時間が駿足ブルーワンダーによって短縮され、その分、マシンのメンテナンス時間の余裕ができたことを歓迎したわけだ。



















































