フェラーリのファクトリー所有歴ある真性跳ね馬
エスティメートを割り込むも約3.6億円で落札!
2017年、新たな所有者に引き継がれたフェラーリ 550 GTCは、細部まで配慮されたレストアを経て、2003年スパ24時間レース仕様のカラーリングに復元された。特筆すべきは、V12エンジンとシーケンシャルトランスミッションが双方ともにリビルドされた点である。V12エンジンは2016年に「アウトテクニカ モトーリ」社、トランスミッションは2017年にヒューランドの専門家として知られるスティーブ バノン氏によって再生の手が差し伸べられる。
その結果、2021年3月に「フェラーリ クラシケ」認証を取得。550 GTCはシャーシ/エンジン/ギヤボックスがすべて一致する、いわゆるマッチングナンバーを保持していることが確認された。
そして、今回のオークション出品者でもある現オーナーが入手したのちには、もともとフェラーリ 550 GTプロジェクトにも関与していたトリノの「イタルテクニカ」社、およびマラネッロの「トニ アウト」社による、こちらも配慮ある再整備が施された。
この時のサービス内容には、エンジンの完全点検とタイミングベルト交換、トランスミッション再構築、新品クラッチへの交換、エンジン+プロペラシャフト+トランスアクスルのアライメント調整、新品ブレーキに加えて、「MO.TEC」社製フルエンジン管理システムの装着が含まれるが、マニエッティ マレリ社製の純正ECUも付属する。
さらには2セットのホイール&タイヤに加え、カーボン製プロペラシャフトを含むスペアパーツパッケージも、車両に添付されて落札者に引き渡されることになっていた。
その後、アンドレア モンテルミニ選手による一連のシェイクダウンテストを経て、2024年10月にイモラで開催された「フェラーリ フィナーリ モンディアーリ」記念イベントに出走。2025年5月の「モンツァ チャレンジ&GTデイズ」でも成功裏に走行し、同年10月にはムジェッロで開催されたフィナーリ モンディアーリにも再登場した。
RMサザビーズ欧州本社の専門家チームは、550 GTCを複数回運転する機会に恵まれ、その扱いやすさと快適な走行性能を確認。そのうえで「フェラーリ工場所有歴を持つこの550 GTCは、同社の競技史において極めて興味深い存在である。近年人気が高まるヤングタイマーGTヒストリックレースシリーズへの出場資格を有することに加え、コンクール デレガンスや展示イベントへの参加にも最適」という宣伝文を添えつつ、220万ユーロ〜240万ユーロ(邦貨換算約4億円〜4億3900万円)という、自信ありげなエスティメート(推定落札価格)を設定していた。
ところが、1月28日にパリ ヴァンドーム広場からほど近いルーヴル宮殿「サル デュ カルーゼル」で行われた競売では、エスティメートを少々割り込む197万3750ユーロ。つまり現在のレートで日本円に換算すれば、約3億6000万円という価格で、競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。
裕福で腕自慢の上級エンスージアスト限定モデル素人が乗れないレーシングカーがマイナス要素か
ところで、ここから先は筆者の私見なのだが、この日の落札価格が出品者側の期待ほど伸びなかったことには、さもありなんという気もしないではない。たとえ入手できたといえども、このフェラーリは誰もが普通に乗れるシロモノではないからである。
実際、こんな真正のフェラーリ コンペティツィオーネを走らせられる環境は、しかるべきサーキットに限定されること。また、エンジンを始動させるだけでも専用のコンピュータソフトが必要で、専門知識とスキルを持ったメカニックの助けがなければコースインもままならない。なんとか走り出すことはできても、消耗品などのスペアパーツは常時そろえておく必要がある。
つまり、この550 GTCに必要な技術力を備えたスペシャリスト、たとえばフェラーリ本社の「コルセ クリエンティ」部門などに預け、走行イベントのある時だけ、サーキットのピットまでキャリアカーで運んでもらい、整備や暖機まで済ませてもらった上で「愛車」とともにピットアウト。そんな乗り方ができる、裕福かつ腕自慢の上級エンスージアストでもなければ、このマシンに興味を示すことはあるまい。
そして、そんな上級者が集まって入札を競うというレアな状況にならない限りは、オークションでのハンマープライスも、おのずと頭打ちしてしまうということなのであろう。
※為替レートは1ユーロ=183円(2026年3月20日時点)で換算














































































