学校の片隅で朽ちた不動のR30が、学生たちの情熱と板金技術で「Re30 スカイラインシルエット」として復活
2026年5月16~17日にAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で開催されたのがオートメッセin愛知2026(主催:オートメッセ事務局/株式会社交通タイムス社)です。このイベント会場で、往年の日産ファンを唸らせた1台がありました。それは日産自動車大学校 愛知校の生徒たちが手がけた「Re30 スカイラインシルエット」です。学校に放置されていた1983年式R30スカイライン 4ドアセダン(GT-E・X)をベースに、スーパーシルエット仕様へと見事に蘇らせたその1台の製作秘話をご紹介します。
全国5校を展開する「日産自動車大学校」とは
日産自動車大学校は、日産グループが運営する自動車整備の専門学校だ。栃木・横浜・愛知・京都・愛媛の5校を展開しそれぞれの学校が特色を出しながら、すべての校で二級自動車整備士の国家資格取得を目指すカリキュラムを持つ。もちろんメーカー直系ならではの最新車両での実習、日産社内資格の取得や就職率100%といった魅力を備えている
そのなかで愛知校と京都校には、車体整備の専攻課程が設けられている。板金・塗装を学ぶ3年制コースで、前半の2年間で整備基礎と二級整備士の資格を取得し、3年目の1年間で板金・塗装に特化した技術を習得する仕組みだ。3年目の集大成としてカスタムカーの製作に取り組み、東京オートサロンをはじめとするイベントに出展してきた実績を持つ。今回の「Re30 スカイラインシルエット」は自動車整備・カーボディーマスター科31期生の手による作品だ。
廃車寸前のR30と、学生たちの強い野心が出会った
今回のベース車両は、学校に長年放置されていた実習用のR30スカイライン 4ドアセダン(1983年式・E-HR30型)だ。屋外に置かれたまま使われなくなり、エンジンも燃料タンクも腐食した完全な不動車だった。「そのまま朽ち果てるのはもったいない」と判断し、学生の技術向上のために活用することになった。
カスタムカー製作は毎年、学生のなかからリーダーを立てて進められる。今期のリーダーが熱望したのは「昔のレースカーの形のクルマを絶対作りたい」という一点だった。インスピレーション源は1982年に富士スーパーシルエットシリーズへ参戦した「スカイライン スーパーシルエット」、いわゆるシルエットフォーミュラマシンだ。そのリーダーの熱意に周囲も引っ張られ、テーマに向けて計画はとんとん拍子で決まっていったという。
製作当時の学生は20前後の世代だ。「今のクルマにはないデザイン、この角張ったようなスタイリング。クルマらしい造形を持つ旧い自動車が好きな学生が意外と多い」と担当教員の濱村先生は語る。車両名の「Re」にはReborn・Remake・Respectの3つの意味が込められている。
手描き設計で挑んだFRP成形、制作期間は2.5ヶ月!?
製作期間は10月から冬休みまでのわずか2ヶ月半ほどに限られる。通常の学科授業と並行しての作業で、設計図は絵が上手い学生が手描きで起こし、そこからフォルムの基準となる型は発泡ウレタンを削り出して確認しながら作業を進めた。
エクステリアの核となるオーバーフェンダーはFRPによるワンオフ製作で、片側90mmの拡幅を実現。拡幅後の全幅は1900mm弱に達する。ワイド化に合わせてテールランプの位置も移設し、給油口はオーバーフェンダーに沿って再配置した。フェンダー表面のリベット打ち風の意匠は一体成形のFRPに造形を加えた仕上げで、本来は分割リベット留めの計画だったが時間的制約からやくなく方針を変えたが、結果としてかなりの再現性が実現できたという。もちろん前後ドア、給油口の開閉も自在だ。リアウイングもワンオフで、端部はFRP・中央支柱は曲げ加工の鉄板で構成した。

マフラーは当時のシルエットマシンを意識したサイド出し仕様をワンオフで製作し、サイドステップ下部のエアロには角パイプを内側から入れて補強している。ボディカラーは当時のR30純正レッドを下地に、ラメ塗料を吹き付けてクリアで閉じ込めたこだわりの3層仕上げだ。ホイールは学生自身がWORK EQUIP 01を選び、WORKのスポンサードで装着を実現した。エンジンと腐食した燃料タンクを含む機関部の修復も並行して実施しており、これらの修復を含め改造内容は車検対応の範囲内で設計しており、登録書類が用意できれば公道走行も可能な仕様となっているという(一部要仕様変更)。
小さな興味が大きな野心になる学校
濱村先生は日産自動車大学校について「エンジンから外装まで、クルマのことを何でも直せるようになりたいという野心がある人に向いている」と語る。ものづくりへの興味や、古い車体を自分の手で蘇らせたいという気持ちを持つ人なら、最初から強い野心がなくても構わないとも続けた。「ちょっと興味あるなというだけでも正直ハマってしまうと思う。小さな興味が大きな野心になっていく」という言葉が、この学校の学びの核心を端的に表している。
Re30 スカイラインシルエットが示したのは、基礎の徹底がクオリティを生むというシンプルな事実だ。わずか2.5ヶ月という製作期間で往年のファンをうならせる完成度を実現できたのは、2年間で積み上げた整備の基礎があったからこそだろう。学校の片隅に眠り続けた1台のR30は、ひとりの学生の「絶対作りたい」という野心を起点に、新たな物語を刻んだ。











































































