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超レアなホモロゲーションモデル! 極上コンディションのBMW M3 GTが約2970万円で落札

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2026 Courtesy of RM Sotheby's  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

幻のホモロゲーションモデル! 第2世代「M3」の究極進化系

セレブの国であるモナコは、クラシックカーの愛好家にとっても夢の国のようです。2年に1度開催されるイベントに付随するかたちで、RMサザビーズ社の「MONACO」オークションが大々的に開かれます。今回はその出品車両のなかから、昨今のマーケットで大人気の「ヤングタイマー」時代にBMW本社が自ら限定生産した究極のチューンドカーBMW「M3 GT」のあらましと、最新オークションの驚きの結果についてご紹介します。

モータースポーツのために生み出された356台限定の特別仕様車

現在でもBMW 3シリーズの頂点に立つスーパースポーツバージョンである、BMW「M3」。その開祖にあたるBMW「M3(E30型)」は、ドイツDTM選手権やETC選手権などのツーリングカーレースにて、メルセデス・ベンツ「190E 2.3-16」や格上のフォード シェラRSコスワースなどを凌駕するべく登場したホモロゲーションスペシャル(レース参戦の認可を得るために生産される市販車)だった。そして、その楽しいハンドリングに力強い4気筒DOHCエンジン、さらにレーシングカーのようなブリスターフェンダーをまとったルックスによって、またたく間にファンを獲得していく。

そして、そのビッグネームを継承する2代目としてE36系3シリーズをベースとした新生M3は、BMW M社謹製の直列6気筒DOHC24バルブである「S50B30」エンジンを長いボンネットの下に搭載して、1992年にリリースされた。

この第2世代M3は、とくにヨーロッパおよび日本仕様では286psという、当時の3000cc級自然吸気エンジンとしては目覚ましいパワーを獲得していたが、その一方で快適性と洗練性を高めることにも力を入れていた。くわえて、3シリーズの2ドアモデルは正式に「クーペ」を名乗るようになり、M3もE30時代のサーキット志向のリアルスポーツセダンというよりは、グランドツアラー的クーペを目指すことになったのだ。

しかし、1994年からヨーロッパとアメリカの双方でGTカテゴリーによる耐久レース選手権が発足するに至り、もとより優れたポテンシャルを有していたE36系M3にも、モータースポーツを意識した市販ホモロゲートモデルが用意されることになる。

アルミ製ドアによる軽量化とグリーンで統一された内外装

より深く調整可能なフロントスプリッター、高めのリアウィング、「ブリティッシュ・レーシング・グリーン」のボディカラー、そして「メキシコ・グリーン」のナッパレザー内装は、E36世代のM3 GTを象徴する特徴だった。

さらに、30kgの軽量化を図る一環としてアルミ製ドアを採用し、カムプロフィールの変更や圧縮比アップによって295psまでスープアップした3.0リッター24バルブエンジンを搭載。5速MTが組み合わされたこのモデルは、「FIA-GT」および「IMSA GT」シリーズへの参戦車両としてホモロゲートを得るため、BMW M社によってわずか356台のみが限定生産され、すべてEUマーケット限定で販売された。

約30年前のサーキット志向モデルでありながら快適装備も充実

このほどRMサザビーズMONACOオークションに出品されたBMW M3 GTは、1995年4月29日に生産され、その4週間後にバイエルン州ベルヒテスガーデンのBMW正規ディーラーであるオートハウス・モデレッガー社を介して、ドイツ国内在住の初代オーナーに引き渡された。

特筆すべきは、製造されたすべてのM3 GTのなかでも、もっとも充実した装備を備えた1台であることだ。豊富なオプションリストのなかで際立つのは、前席シートヒーターにヘッドライトウォッシャー、オートエアコン、クルーズコントロール、電動スライディングルーフなど。そして、約30年前に製造されたサーキット志向の特別仕様車としてもっとも注目すべき点は、リアのパーキングセンサーまで装備されていることだろう。

初代オーナーのもとで2年間にわたり愛用されたあと、このM3 GTは1997年5月をもって母国ドイツを離れ、スウェーデンへと輸出される。さらに、車両に添付されたドキュメントファイルに含まれていた車両履歴報告書には、2002年11月および2006年6月、2007年4月、2009年6月と4回分にあたる所有者変更歴が記録されており、その後2011年5月にはフィンランドへ移送された。

ただ実際のところ、フィンランドに生息した11年間にはほとんど走行されることなく終わり、2022年7月にはドイツのホーエンブルンにあるBMW専門ディーラーであるミント・クラシックス社が、フランスのコレクターの依頼を受けてこのM3 GTを調達する。そして、新たな名義人となったフランス人コレクターもまた、このクルマでドライビングを楽しんだり、ナンバー登録したりすることを望まなかったという。

それでも彼の所有期間中には、ミュンヘンのBMWクラシック認定ワークショップに持ち込まれて小規模のオーバーホールが施されたことにより、極上コンディションに仕上げられることになる。

その後、2023年初頭に今回のオークション出品者である現オーナーによって入手され、直近の2026年2月には南仏アヴィニョン近郊の小村にあるJLCアトリエ社にて、クラッチのスリーブシリンダーを新品に交換したほか、ドライブシャフトおよびリアアクスルにもリフレッシュが施されたとのことだった。

RMサザビーズの公式オークションカタログ作成時点での走行距離計は9万1652kmを示しており、M3 GT専用スペアホイール一式と整備請求書、オリジナルの注文書、純正ツールキットにくわえ、サービスブックとM3 GT専用のオーナーズマニュアルが収められたBMW純正フォルダーが付属している。

E36系の枠を超越する約2970万円の落札価格! 次代のコレクターズカーへ

このBMW M3 GTについて、RMサザビーズ欧州本社は現オーナーとの協議のうえで、10万ユーロから15万ユーロというエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

そして迎えたオークション当日、見本市会場であるグリマルディ・フォーラムでおこなわれた競売では、想定されたエスティメートの最高値をさらに上回る16万1000ユーロ、日本円に換算すれば約2970万円という高価格で競売人のハンマーが鳴らされることになった。

E36系M3は、同じM3でも初代のE30系に比べると安価というのがこれまでの通例だった。しかし、E30時代でいうところの「M3スポーツ・エヴォリューション」に相当するこのM3 GTは、マーケット相場価格についてもそれに肉薄するほどの高い評価がなされるようになってきた。ヤングタイマー(初度登録から15年から30年ほど経過したモデル)市場の成熟を如実に物語る、歴史的な落札劇となった。

※為替レートは1ユーロ=184円(2026年5月27日時点)で換算

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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