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最新レストモッドは約6343万円! ホンモノのレストアに約630万円というフォード「エスコートMEXICO」の圧倒的価値!!

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TEXT: AMW編集部  PHOTO: Bonhams  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

息子が完全復刻したエスコートの熱きメカニズムと相場のリアルに驚く

かつてサーキットを熱狂させた父親の栄光を、実の息子が執念のレストアによって現代に蘇らせた。そんな胸が熱くなるようなバックストーリーを持つ1台のレーシングカーが、英国のオークションに登場して話題を呼んでいる。その正体は、1971年式のフォード「エスコート Mk1 メキシコ」だ。名機の血統や徹底的にこだわり抜かれたメカニズム、そして現代のクラシックカー市場が示すリアルな相場感から、このクルマが放つ圧倒的な価値を探る。

AVOが手掛けた名機であるメキシコの偉大なる血統と歴史を振り返る

そもそも「エスコート メキシコ」というモデルがどのような歴史を持っているのか、少しだけ時計の針を戻してみる。1970年、フォードはロンドンからメキシコを目指す過酷なワールドカップ・ラリーで見事に優勝を果たした。この歴史的快挙を記念して、フォードの特殊車両開発部門であるAVO(アドバンスド・ビークル・オペレーションズ)が市場に放ったのがメキシコである。

ツインカムやRS1600と同じ強靭なタイプ49ボディシェルに、チューニングのベースとして極めて優秀な1600ccのケント「クロスフロー(エンジン内で発生する空気と排気ガスの流れを、それぞれ一方通行で交差させるように設計)」エンジンと2000Eギアボックスを搭載していた。このケント・エンジンは構造がシンプルなOHVで耐久性が高く、手軽にパワーを引き出せることからスーパー7のベーシックモデルのエンジンに採用されたり、モータースポーツの登竜門エンジンとして愛された名機だ。卓越したパフォーマンスを発揮しながらも、メンテナンスが容易で保険料も手頃だったことから、当時の英国のクルマ好きたちから熱狂的な支持を集めることになる。

著名ロックバンドが支援した父の愛機をドンガラ状態から完全復活させる

この特別なエスコートには、さらにドラマチックなストーリーが秘められている。1970年代、レイ・ベイルという名のレーサーが、イングランド南東部のリデン・ヒルを中心にラリークロスやホットロッド界で大活躍していた。彼は、世界的なロックバンドである「ステイタス・クォー」のドラマー、ジョン・コグランと親交があった。その縁からコグラン個人のスポンサードを受け、さらに彼を通じて打楽器メーカーの「プレミア・ドラムス」からも同額の資金援助を獲得していたのだ。グラムロックの空気を纏ったそのマシンは、当時のモータースポーツシーンで誰もが知る有名な存在となっていった。

時は流れ、息子のディーン・ベイルは父の輝かしい功績を称えるべく、この伝説のレーシングカーを自らの手で復刻させることを決意する。2005年から2007年にかけて、ベースとなるメキシコのドンガラ状態のボディシェルから徹底的なレストアが敢行された。工場出荷時のブラックボディにモンツァブルーのルーフとストライプをあしらい、当時父がステアリングを握っていたマシンの姿を見事に再現している。

充実の足まわりと1700cc化されたケントエンジンが本気度を物語る

当時の競技スタイルを強く意識したエクステリアも見逃せない。大きく張り出したバブルアーチのフェンダーに収まるのは、9J×13インチの極太なレボリューション製4スポークアルミホイール(タイヤサイズ215/50R13)である。バルジ付きのFRP製ボンネットや、ワンオフ(特注品)のアルミニウム製フロントスポイラー、同じくワンオフのファイバースポーツ製リアスポイラーがただならぬオーラを放つ。スムージングされたドアノブは電子制御で開閉する仕組みだ。室内にはアルミニウム製のドアパネルが張られ、コルビュー製のGT8シートに当時のブリタックス製レーシングハーネス、そしてフルロールケージが組み込まれている。後部座席にはオリジナルのメキシコ・ベータクロス製のシートが残されている点も心憎い。

ボンネットの下に収まる名機ケント・エンジンは1700ccにボアアップされ、ビッグバルブヘッドやコスワース製のフラットトップピストンを組み込んでいる。ドライサンプ潤滑システムにマイクロ・ダイナミクス製の電子イグニッションを備え、吸気系にはウェーバー製45DCOEキャブレターを2基搭載するという本気のセッティングだ。

駆動系にはタイプ9の5速マニュアルトランスミッションを搭載し、ワンピース構造のRS用プロペラシャフトを介してクワイフ製のATB(オートマチック・トルク・バイアシング)デフへとパワーを伝える。足まわりも抜かりなく、フロントにはGaz製車高調(車高調整式サスペンション)と同心トップマウント、ワールドカップ・クロスメンバーを装備している。リアにはキャンバー角を変更したシングルリーフスプリングとSpax製アジャスタブルダンパーを組み合わせ、各部のポリブッシュ化や銅製ブレーキラインを備えたM16フロントブレーキキャリパーなど、実戦さながらのアップグレードが施されている。

約6343万円の最新復刻版と比較して際立つヒストリックカーの価値を伝える684万円

つい先日、英国のボアハム・モーターワークスからフォード公認となるエスコート Mk1の最新レストモッド(旧車をベースに現代の技術でアップデートした車両)が発表された。その価格が29万5000ポンド(邦貨換算約6343万円)というスーパーカー並みの設定であったことが、業界で大きな話題となったばかりだ。

最新技術で緻密に作り込まれた数千万円のレストモッドが存在する一方で、当時の本物の匂いと親子の愛が詰まったオリジナル個体が3万1800ポンド(邦貨換算約684万円)で落札されたという事実は、現在のクラシックカー市場のロマンとリアルな相場感を如実に表している。

キャブレターが豪快に空気を吸い込む音、むき出しの機械が発するメカニカルノイズ、そしてガソリンが燃える匂い。父親の伝説をガソリンエンジンとともに後世へと語り継ぐこのエスコートは、内燃機関の素晴らしさと、お金では決して買えない歴史の重みを私たちに強く再認識させてくれる。

※為替レートは1ポンド=215円(2026年7月1日時点)で換算

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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

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