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290台限定のポルシェ「964カレラRS」をルーフが3.8Lターボ化。約6789万円で落札

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TEXT: AMW編集部  PHOTO: RM Sotheby's  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

限定290台の空冷ポルシェにターボを積んだ究極のコンプリートカー

空冷ポルシェマニアの度肝を抜く、極めて希少かつ過激なモデルが海外のオークションに登場した。世界でわずか290台のみが生産されたポルシェ「964型カレラRS N/GT」をベースに、名門チューナーのRUF(ルーフ)が3.8リッターのターボエンジンを換装した「BTR 3.8」である。36万5000ユーロ(約6789万円)という驚愕の価格で落札されたこのモンスターマシンの生い立ちと、クルマ好きを熱狂させるディテールが明らかになった。

290台限定のハードコアモデルを惜しげもなくベース車両として使用

ポルシェ「911」の歴史において「カレラRS N/GT」は、964型のカレラカップ用レーシングカーを公道向けに発展させた特別なハードコアモデルとして知られている。その生産台数はわずか290台という極めて希少な存在だ。

今回オークションに出品された個体は、1992年6月に製造され、ドイツのフランクフルトに住む最初のオーナーへとデリバリーされた車両である。ボディカラーは、ポルシェファンの間で高い人気を誇る鮮やかなマリタイムブルーが選択されている。

さらに特筆すべきは、新車時から「M003」オプションコード、すなわちクラブスポーツパッケージが組み込まれていることだ。これにより、強固なロールケージをはじめ、シュロス製ハーネスを備えたレカロ製バケットシート、室内キルスイッチ、極薄ガラス、拡張された大容量燃料タンク、軽量化されたドア内張りやワイヤーハーネスなどが追加され、一切の妥協を排したスパルタンな仕様となっている。

3.8リッターターボと6速マニュアルを組み合わせた過激なスパイシーチューニング

この希少なクラブスポーツ仕様は、1999年に名門RUFオートモービルへと持ち込まれBTR 3.8仕様へとコンバートするという、一般人から見れば「常軌を逸している」運命を辿ることになる。RUFは単なるアフターパーツのチューナーではなく、ドイツ連邦自動車局(KBA)から正式に自動車メーカーとして認定されたブランドである。自らの手でエンジンやシャシーに手を加え、独自のシャシーナンバーを打刻する彼らのモデルは、ポルシェ愛好家の間でも別格の存在として扱われており、ベース車両の希少性を考えればまさに禁断の魔改造と言える大胆なアプローチだ。

リアのエンジンルームには、排気量を3.8リッターまで拡大した「M64/50型」のターボエンジンが押し込まれている。最高出力は415馬力(PS)を誇り、RUF製の6速マニュアルトランスミッションと組み合わされている。デュアルマスフライホイール(振動や騒音を低減するフライホイール)の採用により、強烈なパワーを確実に路面へと伝えることが可能だ。

エクステリアや足回りにもRUFの哲学が惜しみなく注ぎ込まれた。ターボスタイルのリアスポイラーやRUF製エキゾーストエンドパイプを備え、専用のメーターパネル、サスペンション、強化ブレーキシステム、追加のオイルクーラー、そしてOZレーシング製ホイールが装着されている。この大規模な改造にかかった費用は、当時で10万6000ドイツマルクを超えていたという記録が残っている。

25年の眠りから目覚め約554万円の重整備を受けてオークションに出品

RUFでのコンバートが行われた時点で、この個体のオドメーター(総走行距離計)は2万5902kmを指していた。その際、メータークラスターが新しいものに交換されてリセットされている。出品時のメーター表示は6222kmとなっており、生涯の総走行距離は約3万2000kmであると推測されている。

実はRUFによる改造後、このクルマは25年近くにわたってガレージで保管され、ほとんど走行していなかった。しかし2025年に現在のオーナーによって再び命が吹き込まれたのである。同年12月には再びRUFのファクトリーへと持ち込まれ、フロントガラスの交換やブレーキのオーバーホール、ビルシュタイン製サスペンションの新調、そしてエンジンの大規模な整備や新品タイヤへの交換など、徹底的なリフレッシュが施された。この重整備にかかった費用は、約554万円(2万9785ユーロ)に上る。

RMサザビーズのオークションに出品されたこの個体には、36万〜45万ユーロ(邦貨換算約6696万円〜8370万円)というエスティメート(予想落札価格)が設定されていたが、最終的に36万5000ユーロ(約6789万円)という高値で落札された。

参考までに、1992年当時の964カレラRSの新車価格は日本円で約1000万円強であった。昨今のクラシックポルシェ市場の高騰により、現在では標準モデルのカレラRSでも3000万〜5000万円台、希少なN/GT(クラブスポーツ)の極上車ともなれば7000万円以上で落札されるケースも珍しくない。

通常、クラシックカー市場においては「新車時のオリジナル状態」が最も高く評価される傾向にある。にもかかわらず、エンジンや外装にまで大きく手が入った本個体が、オリジナル極上車に迫る約6789万円という高額で落札された。この事実は、RUFというメーカーがいかに別格の存在としてリスペクトされているかを雄弁に物語っている。世界限定290台のシャシーに大排気量ターボとマニュアルトランスミッションを詰め込んだこの1台は、その歴史的価値と唯一無二のスペックが正当に評価された結果と言える。

※為替レートは1ユーロ=186円(2026年7月24日時点)で換算

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  • AMW編集部
  • AMW編集部
  • 国内有数のカスタムカーイベント「大阪オートメッセ」から生まれた自動車情報メディア「AUTO MESSE WEB」の編集部です。『CARトップ』などの自動車専門誌を発行する交通タイムス社が運営し、現在は4人の編集者を中心に、カスタム&チューニングを軸に新車、旧車、パーツ、イベントなど幅広いジャンルを取材・編集。正確性と信頼性を大切に、クルマを楽しむための情報を毎日お届けしています。 X→https://x.com/AutoMesseWeb
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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

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