有名国立公園ブームでキャンプサイトは満杯
セコイア国立公園は、ぼくにとって特別な場所だ。かつて20年近く前、カントリーホーム製VWバナゴンキャンパー、愛称「バナチン」とともに3日間滞在し、国立公園の素晴らしさを実感した思い出の地だ。10月の国立公園はすでにシーズンオフで人も少なく、ゆったりとした時間を過ごした記憶がある。今回もそのときに滞在したポトウィッシャ・キャンプグラウンドにチェックインするつもりだった。
ところが……。ところが、である。ものすごい数のクルマ、人である。国立公園に入る手前のレストランやマーケットから大混雑だ。近年、有名国立公園に押し寄せる人が急増していると聞いていたが、これほどまでとは思わなかった。これはヤバい!
ビジターセンターに駆け込み、「ポトウィッシャにチェックインしたいんですけど」と相談すると、「ダメダメ、予約でいっぱいだよ」と門前払いだ。「予約? ファーストカム・ファーストサーブ(早く到着した人からサイトを取れる仕組み)じゃないんですか?」「いったい、何年前の話をしてるの? とっくの昔に変わったんだよ。アゼリアに行ってみたら? 少しはチャンスがあるかもよ」という。アゼリア・キャンプグラウンドは国立公園の正反対、山道を3時間以上、走らなければならない。そんなところまで行ってしまったら、肝心の見どころを全部、すっ飛ばすことになる。
しばし呆然としたが、「まあ、なんとかなるだろう」と開き直って、家族づれに混じってセコイアの森をハイキングすることにした。
不死伝説のある巨大樹・セコイア
セコイアは巨大な樹だ。なかでも「シャーマン将軍の木」と名づけられたセコイアは、地球上最大の生物として知られる。樹齢2700年の木の前に立つと、文字どおり自分がちっぽけな存在であることを思い知らされる。
セコイアには不死伝説がある。セコイアが死ぬ原因は、山火事、落雷、自重崩落、伐採のみ。寿命が尽きて死ぬことはないというのだ。人間が夢見て止まない「不死」をすでに手に入れているのか。シナモン色の分厚い樹皮を見ていると、それも真実に思えてくる。そもそも人間がほかの生き物より優れていると考えるのはおかしい。人間より優れた才能を持つ生物はたくさんいる。それを謙虚に認めたほうがいい。
巨木の森をゆっくりと歩いているうちに、旅行がスムースにいかないことにイライラ、クヨクヨしている自分の気持ちが少しずつ落ち着いていった。
■「米国放浪バンライフ」連載記事一覧はこちら