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N1仕様「R32 GT-R」が「ガレージ伊藤」を育てた! レース車両製作の苦労がストリート仕様にいかされています

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TEXT: 増田髙志  PHOTO: GT-R Magazine

N1車両の製作時の苦労がクルマ作りに生きる

「R32にのめり込んで行ったのは、登場してから1〜2年が過ぎたころでした。N1車両を作ることになり、当時60万か70万円くらいで手に入ったホワイトボディから作りました。いつになく気合が入っていましたよ」

だが入念に作ったはずなのに、レースでの実戦ではことごとく壊れた。サーキットを疾走するとストリートでは発生することがなかった思いも寄らないトラブルが、後からひっきりなしに出てきた。

「サーキットは全開の領域がストリートと比べてすば抜けて長いですからね。阪神高速を飛ばしているぐらいでは何の兆候も現れなかったような部分が、ことごとく音を上げました。とにかくメンテナンスに大忙しだっとことを覚えています」

まだどこのショップもR32に対してのノウハウが少なかったころ。ターボはブローし、エンジン本体もダメージを喰らう。さらにトランスミッションも散々壊した。だが伊藤代表はどんな不具合でも持ち前の分解組み立て技術を駆使してトラブルの原因を見つけ出し、その対応策を考えた。

「エンジンもトランスミッションも、オイル絡みの不具合が多かったですね。オイルの温度管理や供給方法など、スタッフとアイディアを出し合っていろいろ工夫しました。今にして思えばオイル自体の性能が低かったのも影響していると思います。現在は良いオイルがたくさん出ていますからね」

そんな苦労もあって、世間に「ガレージ伊藤はGT-Rの凄腕ショップ」と浸透させることになった。ちょうどN1車両をメンテナンスしていた時期にもう1台R32を所有していたのだが、こちらは純然たるストリート仕様で、N1で得たノウハウを余すことなくフィードバックして仕立ててある。

この車両でチューニングカーによるレースイベント「チューニングフェスタ」の初回に参戦した。今でも岡山国際サーキットで行われているイベントだ。最初は全国から4台のR32が集結して競い合い、結果は見事に優勝。まさにN1での苦労が身を結んだのだ。そこから一気にガレージ伊藤を訪れるGT-Rユーザーが増えていった。 

N1車両を公認取得でストリート仕様へ

当時から現在まで、ガレージ伊藤のデモカーはスペシャルパーツを付けるというような特別なことは一切していない。市販パーツを使い、みんなが真似できる仕様を心掛けている。デモカーだけ凄くてもユーザーに反映できなければ意味がないというのが伊藤代表の揺るぎない考えだ。 

現在のデモカーは2.8Lに排気量を上げてあるビッグシングルのR34だ。走るステージに合わせて三菱やGCGのターボを付け換えてテストしており、ブーストは1.5kg/cm2前後で650~700psをマークする。R32のN1仕様に比べれば大きくパワーアップしている反面、苦労は少ない。今でもN1で得た経験が随所に生きているからだ。 

RB26エンジン

「N1で勉強していなかったら今でも手こずっていたかもしれません。それほど思い出深い1台です。苦しい思い出ばかりですけどね」 

N1は規定でエンジンには手を入れられないため、チューニング箇所は意外と少ない。ニスモターボ、バルタイの変更、トラストのマフラー、ワンオフの車高調、ラムズのブレーキパッドぐらいだ。しかし壊さないためのひと手間は各部にさり気なく施してある。

伊藤代表はこのクルマをレースで使わなくなると、大胆にもナンバーを取得して街中で走らせる計画を練った。まっさらの状態から公認車検を取るためには、当時10モードと11モードの排ガス試験を2日間かけて行う必要があった。ゴツい排ガス測定装置でみっちりと調べられるのだが、エンジンはノーマル、しかも新品のキャタライザーを装着し挑んだので簡単にパスするだろうとなめてかかった。

するとあっけなく1日目でアウト。2度のチャンスがあるので、必死にコンピュータを書き換えてガスを薄くセッティングし直し、何とかことなきを得て合格。こうしてナンバーが付いて、晴れて公道を走れるようになったのだ。 

「N1を作っているときばかりでなく、ナンバー取得でも手間を掛けさせられました。間違いなく生涯で一番苦労したGT-Rですね」と昔を懐かしみながら言い切る伊藤代表は、ちょっと誇らしげに見えた。

(この記事は2020年12月1日発売のGT-R Magazine 156号に掲載した記事を元に再編集しています)

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