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BMW「2002ターボ」が50周年! 全世界にターボの新時代を巻き起こした名車を振り返ろう

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: BMW AG

悲劇の名作となるも、全世界にターボの新時代を巻き起こす

ツーリングカーレースでヨーロッパタイトルを獲得した2002tikのレース活動で獲得した貴重な経験、あるいは1972年に製作・発表され、のちのM1の起源になったとも言われるコンセプトカー「BMWターボ」の経験をフィードバックした市販モデルとして生み出されたのが、現在では歴史的名作と称される2002ターボである。

同じく名作として知られるポルシェ930ターボに先んじてリリースされたことから、かつては2002ターボについて「世界初の量産ターボ車」とする記述も散見されたが、それは誤りであることは、AMW読者諸兄ならばご存知であろう。

蛇足までに記しておくと、世界で初めてターボ過給エンジンを搭載した乗用車は、米国オールズモビルが1962年に発売した「F-85ジェットファイア」および、シボレーの「コルヴェア・モンザ」。いずれも北米ゼネラル・モーターズに属する2メーカーから送り出されたが、この時代は過給圧も低くて大きなパワーアップを果たせていなかったこともあってか、大きな影響力を及ぼすに至らなかったという。

いっぽう、11年後に登場した市販型2002ターボのエンジンは、それまで2002系の最高性能版だった「tii」用の直列4気筒SOHC・1990ccユニットをベースにモディファイしたもの。圧縮比を6.9:1まで落とし、シェファー社製機械式燃料噴射とKKK社製ターボチャージャーとの組み合わせで、自然吸気版から40psアップに相当する170psのパワーと24.5kgmのトルクを発生した。

また、パワーアップやターボ特有の熱量増大に対処して冷却系も強化。一方トランスミッションは標準型2002と同じ4速MTが標準で、5速もオプション選択可能とされたが、ともにクロスレシオ化されたかたわらで、増大したトルクに対応してファイナル・ギアレシオも速められていた。

もちろんシャシーについてもサスペンションが一段と固められたほか、ブレーキも前ディスク/後ドラムを踏襲しつつもフロントはベンチレーテッド化され、リアドラムも径が拡大された。さらにホイール/タイヤも大幅にワイド化。そしてその拡幅分をクリアするため、前後フェンダーにはリベット留めのFRP製オーバーフェンダーが追加されたものの、日本仕様のみは鈑金加工で一体化したスチール製オーバーフェンダーとされていた。

くわえてエクステリアでは、フロントにバックミラーに映った際に正しく見えるよう、「turbo」を逆さ文字で記したデカール付きのエアダムスカートを装備。そして、こののちドイツを中心に流行する、ソフトな材質の樹脂製リアスポイラーで完全武装していた。

こうして誕生した2002ターボは、最高速211km/h、0-400m加速15.3秒という、当時の2L級サルーンとしては圧倒的なパフォーマンスを獲得することになる。

ところが、1970年代中盤にはオイルショックに端を発する省燃費対策や安全対策、あるいはエミッションコントロールのため、高性能車が世界的な冬の時代を迎えていたことから、1974年末限りで生産を終了。その生産台数は、わずか1672台(ほかに諸説あり)に過ぎないという、悲運の名作ともなってしまった。

それでも、その後ヨーロッパから日本でターボ時代が発生する起源となり、さらには元祖であるアメリカにもターボ過給のムーブメントを再燃させた立役者であることは、間違いない事実なのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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