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スーパーカーの代名詞フェラーリ「512BB」の不動車が2.2億円! 高額の理由はル・マンに出場したコンペティツィオーネだからでした

スーパーカーの代名詞フェラーリ「512BB」の不動車が2.2億円! 高額の理由はル・マンに出場したコンペティツィオーネだからでした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

約2億2000万円のハンマープライスは、もしかしてリーズナブル?

リタイヤに終わったル・マン24時間レースのあと、この512BBコンペティツィオーネはキネッティによって保管され、そののち1980年にフロリダ州マイアミのグレン・カリルに直接譲渡された。カーペットの販売業者である彼は「195インテル」、「ディーノ206 S」、あるいは「275 GTB/4 NARTスパイダー」などの希少なフェラーリを数多く所有する、有力なコレクターだったという。

カリルは実際にロードカーとして街中を走り回ったほか、ときには地元のイベント会場である「ハリウッド・スポルタトリウム」を貸し切って、家族や友人たちとともに512BBコンペティツィオーネを制限なく楽しんだという。そして1981年1月、カリルはこのフェラーリをウォルター・メドリンに譲渡。以来42年間にわたり、ほかのフェラーリ・コレクターや世間の注目を浴びることなく、ひっそりと隠遁生活を送ることになった。

この夏「Lost & Found Collection」の1台としてオークションに出品されたシャシーナンバー#24131は、スポンサーのデカール、ドライバーの名前、象徴的なNARTのデカールなど、1978年ル・マンに出走した際の際のオリジナルカラーリングが施されている。

フェラーリ「512BB コンペティツィオーネ」

本格的なレースヒストリーを持つこのフェラーリは、希少性とユニークなエンジニアリングを併せ持つ特別なコンペティションカーであり、伝説のNARTチームカーとしてル・マンに参加したことから、その母国であるアメリカでの評価はさらに高まるとも予測されていた。

また、現オーナーが1981年に入手して以来レストアのたぐいを一切施されておらず、1978年のル・マンでの姿を忠実に再現している。くわえて、フェラーリ本社ファクトリーとの間に交わされた手紙のコピーや、初期のレーシング512BBに関する研究を記したドキュメント、そしてACOル・マン24時間レースの特徴を記したシートのコピーなどが記録されている。

もちろん、メカニズム面を健全な状態にするためにはフルレストアが必須ながら、歴史的に重要なレーシングフェラーリを現代に蘇らせることに意義を感じる未来のオーナーにとって、とてもやりがいのある経験となることは間違いあるまい。

そしてひとたび正しくレストアされれば、「ル・マン・クラシック」をはじめとする数々のクラシックカーレースにエントリーすることも可能なほか、「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」でヒルクライムに出走するための招待権が得られる可能性も高い。さらには、フェラーリ単一メイクのミーティングはもちろん、主要なコンクール・デレガンスにおいてもスターの座に就くのは間違いのないところであろう。

この魅力的なレーシングフェラーリは、レースのために開発された最初の512BBであり、さらにモディファイとチューニングを施したセカンドシリーズ「512BB/LM」にも技術的な影響を与えたことにより、1980年代初頭までこのモデルの競争力を維持する端緒ともなった記念碑的な1台ともいえる。

だから、マラネッロが512BBでスポーツカー耐久レースに復帰した歴史を知るエンスージアストにとって、この第一歩となったモデルを手に入れるということは、とりもなおさず伝説の一部を手に入れることになるのだろう。

RMサザビーズ北米本社は、この伝説のコンペティツィオーネに対して180万ドル~220万ドルという、いくらレース用のフェラーリとはいえ、完全なる不動車としてはかなり強気なエスティメート(推定落札価格)を設定。そして迎えた競売では、出品者とオークションハウス側の読みを大きく下回る、149万ドルで落札されることになった。

これは日本円に換算すれば、約2億2000万円。エスティメート下限にも満たない価格に終わったものの、これから多くの費用とマンパワーを要するレストアが控えていることを考慮すれば、かなりの高評価を得たのではないか……? とも思われたのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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