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「羊の皮を被った狼」や「ネコ脚」とは!? クルマ業界のちょっぴり変な表現を徹底解説します

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Stellantis/日産自動車/武田公実/AMW編集部

「ネコ脚」

「ねこあし」といえば、一般的には椅子やテーブルの脚部の伝統的なデザイン様式として知られる「猫足」。でも、これが自動車の世界では「ネコ脚」となる。そして自動車メディアでこの表現が使われるのは、原則として英国のジャガー、ないしはフランスのプジョーのサスペンションについて論評するときに限定される。

筆者はプジョーについては門外漢に等しく、残念ながらその由来は知りえていない。だから今回は、自身も愛用した経験のあるジャガーを中心にお話しさせていただきたい。

長らくサルーン各モデルのノーズを飾ってきたマスコット「リーピングキャット」、そして「ビッグキャット」と呼ばれる歴代ジャガー特有の美しくしなやかなスタイリングとも大いに関連するのは間違いないところながら、それにも増して、やはり卓越したシャシーとサスペンションのセッティングこそが、最大の命名理由と見るべきであろう。

時代やそれに伴うサスペンションのスペックの変化を問わず、歴代のジャガーは生粋のスポーツカー、あるいはスポーツサルーンらしいハンドリングを身上とするいっぽうで、NVHを巧みに遮断したしなやかな乗り心地も両立してきた。

そして、あたかもネコのごとくエレガントなジャガーの走行マナーに対して、メーカーないしはディーラー側からではなく、わが国のメディアやファンの間から自然発生的に「ネコ脚」という愛称が誕生。長らくジャガーの代名詞として、敬意と愛情をもって呼び続けられてきたのだ。

ところで、ジャガーおよびプジョーのサスペンションについて考察するにあたって、注目すべきポイントがある。ジャガーに初めてネコ脚なる表現が奉られるようになったのは、傑作「マーク2」のビッグマイナーチェンジ版として1963年に登場した「Sタイプ」あたり。その後1968年にデビューした初代「XJ」サルーンで定着した……、というのが定説となっている。これは日本への自動車輸入が自由化し、黎明期にあった日本の自動車メディアが自由に欧州車を試乗・取材できるような状況になった時期と一致している。

いっぽう、同じくネコ脚の称号で呼ばれるプジョーでは、ジャガーXJと同じ1968年デビューの「504」あたりが元祖になったといわれているようだ。

これら2つのモデルに共通するのは、リアアクスルに当時の量産サルーンとしてはまだ珍しい部類に属していた後輪独立懸架を採用していたことである。

プジョー504は、セミ・トレーリングアーム式。そしてジャガーSタイプおよび初代XJは、「Eタイプ」と基本設計を一にする、ジャガー特有のロワーウィッシュボーン+ラジアスアーム/ツインコイルの後輪独立懸架を採用し、それぞれハンドリングと快適性の「妙なる調和」を実現したことで、当時のメディアなどから最大級の賛辞を受けることになった。

今やジャガーもプジョーも、企業アライアンスによる他ブランドとのコンポーネンツ共用や、グローバル化による個性や乗り味の均質化から、それぞれのネコ脚感はいささか希薄になったともいわれる。それでもよくよく味わっていると、往時の感覚が呼び覚まされることもあるように感じられてしまうのは、乗り手の願望のなせるものかもしれない。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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