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ピュアICEのVW「ゴルフGTI」は今こそ乗るべき!「ゴルフR」と異なる軽快さと安定感は昔ながらの楽しさいっぱいでした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 神村 聖

今こそ、慈しむように味わいたいGTIの本分

ドイツ車らしい堅牢な感触を残すドアを開くと、まず目に飛び込んでくるのは渋いチェック地のテキスタイルを用いたバケットシート。電動調節機能にシートヒーター/ベンチレーターも付いた本革シートをオプションで選ぶこともできるそうだが、今あえてGTIを選ぶような好事家なら、この標準のクラシックなテキスタイルが好ましく映るに違いあるまい。

そしてお待ちかねの時間。「START」ボタンで2L直噴ターボエンジンを始動させると、「ヴォンッ!」と軽く吠えたのち、安定したアイドリングに入る。

カタログによると、通常の燃料直接噴射にくわえて、マルチポイント噴射を備えるデュアルインジェクションシステムを採用し、ハイパワーと環境性能を両立させているとのこと。しかし、この手の込んだインジェクションを採用したことの効力は、シャープなレスポンスにこそ活かされているかに感じる。

今どきの2Lターボで245psというのは、少なくともスペックシートの上では特段たいしたパワーではないと感じるかもしれない。ところがGTIのスロットルを踏み込むと、まるで自然吸気の大排気量エンジンのように、トルクの塊のようなものがグイグイと車体を押し進め、あっという間にスピードを乗せてゆく。また「コーンッ!」ととどろく硬質なエキゾーストサウンドには、いささか作為的な印象がなくもないのだが、それでも快音であることは間違いない。

そして重要なのは、卓越したシャシーのチューニングである。可変ステアリングラックを採用し、ロックtoロックでわずか2.1回転とされた「プログレッシブステアリング」は、ホットハッチというよりはスポーツカーを思わせるハンドリングをもたらしている。

4モーションAWDシステムを持つ現行ゴルフRが重厚なドライブフィールを身上とするのに対して、こちらのGTIは明らかに軽快。乗り心地に粗さなどみじんも感じさせないのに、コーナーではスピードレンジや曲率を問わず、つねに軽快な身のこなしを披露する。またブレーキも、非常にナチュラルな感触を保ちつつ「グイッ!」と効いてくれる。

だから、芦ノ湖スカイラインの高速コーナーでも、狭くて路面の荒れた長尾峠の下りでも、どこでも安心してドライビングに没頭することができる。この軽快さと安定感の「妙なる調和」こそ、初代以来継承されてきたゴルフGTIの真骨頂と思われる。

当初は3.2L自然吸気のVR6エンジンを積んだ「R32」でスタートしたゴルフRが、GTIと同じく4気筒2Lターボになった時には、GTIの存亡を危ぶむ見方もあった。でも今になってみると、約半世紀前のデビュー当初はGTIの特質であったはずの「規格外」な部分はいさぎよくRに任せ、昔ながらのGTIは、より自由にドライビングプレジャーを追求できるようになったかにも感じられよう。

これから先、フルBEVないしは電動アシストのついたハイブリッド車になるのか……? そもそもGTI自体がラインアップに残るのか……? 自動車史上に冠たる名作ゴルフGTIの行く末には、不安めいた可能性も否めない。

だからこそ、もしかしたら最後になるかもしれないこのピュアなGTIを慈しむごとく味わうことには、十分という以上の意義があると再確認したのである。

試乗車の諸元

■VOLKSWAGEN GOLF GTI
フォルクスワーゲン ゴルフGTI

・車両価格(消費税込):514万4000円
・全長:4295mm
・全幅:1790mm
・全高:1465mm
・ホイールベース:2620mm
・車両重量:1430kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ(4バルブ)
・排気量:1984cc
・エンジン配置:フロント
・駆動方式:フロント駆動
・変速機:7速DSG
・最高出力:245ps/5000-6500rpm
・最大トルク:370Nm/1600-4300rpm
・公称燃費(WLTC):12.8km/L
・ラゲッジ容量:380L
・燃料タンク容量:51L
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)4リンク式
・ブレーキ:(前&後)ベンチレーテッドディスク
・タイヤ:(前&後)225/40R18(※試乗車はDCCパッケージ装着で235/35R19)

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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