メーカー純正でここまでやるの? 過剰なほどのヤンチャさが愛おしいイタリアン・ホットハッチ
AMW編集部員がリレー形式で1台のクルマを試乗する「AMWリレーインプレ」。今回のお題は「アバルト695トリビュート131ラリー」だ。EVとなった新型「アバルト500e」の国内導入を目前に控えた今、10数年にわたり熟成を極めてきた内燃機関のアバルト、それも1970年代~80年代にWRCで活躍したラリーカーへのオマージュとなる限定仕様に乗って、古式ゆかしきアナログなイタリアン・ホットハッチの世界を久々に味わってきた。
21世紀のアバルトシリーズは500→595→695と進化
まず最初に、2023年春からアバルトのラインナップ体系が一新されているので情報を整理しておこう。2007年に登場した21世紀版「フィアット500」をベースに、ピリ辛ホットハッチという位置づけで「アバルト500」がデビューし、アバルトブランドが復活を遂げたのが2009年。そして2010年に特別な仕様として「アバルト695トリブートフェラーリ」が発表され、以降、「695エディツィオーネマセラティ」(2013年)や軽量スパルタン特化の「695ビポスト」(2015年)、高級ボートブランドとコラボした「695リヴァーレ」(2018年)など、アバルトの中でも特別なモデルに「695」の名が冠されてきた。
並行して通常ラインナップではアバルト500の上級バージョンとして2013年から「アバルト595」が追加され、2017年には全モデルがアバルト595に統一された。2022年春の時点では「595」ベースグレードが最高出力145ps/最大トルク180Nm、「595ツーリズモ」が165ps/210Nm、ホットモデル「595コンペティツィオーネ」が180ps/230Nmという布陣で、同年7月に無印595に代わる標準モデルとして165ps/210Nmのスペックを得た「F595」が発売された。
そして2023年3月、今度は「695」が通常ラインナップに加わり、モデル体系が整理された。現在日本におけるアバルトのカタログモデルは、標準モデルのF595と「695/695Cツーリズモ」、「695コンペティツィオーネ」という3段構えとなる。695のエンジンスペックはいずれも180ps/230Nm、コンペティツィオーネでは専用色や5速MTが選択可能なほか、カーボンパーツを多用することで軽量化されている(5速ATでツーリズモより-40kg)。
WRCの名車をオマージュした限定仕様はルックスからしてヤル気満々
このようにF595と695シリーズという構成にシンプル化されたアバルトから、2023年6月に発売された限定モデルが、今回お借りしたアバルト695トリビュート131ラリーだ。世界695台限定のうち日本には左ハンドル100台、右ハンドル100台の計200台が導入され、トランスミッションは5速MTのみ。
かつて「フィアット131」を元にアバルトが開発した「131ラリー」は、WRCで1977年、88年、80年のマニュファクチャラー部門シリーズタイトルを獲得した伝説のマシン。今回の限定車では131ラリーをイメージしたブルーでボディをペイントしたうえで、ルーフやリップスポイラー、フェンダーアーチ、サイドスカートをブラックにした2トーンとして、おむすびのようなアバルト695のサイドシルエットをスマートに見せている。
ボディ形状においても、片側5mmずつ拡幅されたワイドフェンダーと、モータースポーツにインスピレーションを得たというサイドスカート、そして12段階で角度調整できるアジャスタブルリアスポイラーがルーフエンドにそびえ立ち、ラリーシーンを思わせる「やる気」仕様となっている。
ボディサイドやダッシュボード、シートなどには131ラリーの姿がデザインされているのもさり気ないポイントだ。131ラリーを知らない人でも、このクルマを見れば戦闘力の高さに期待が高まるだろう。