急遽、鳥山明先生の訃報を受けて心から哀悼の意を表し、研究成果を発表します
AMW編集部員が真夜中にこっそり好き勝手に好きなことだけをひたすら追究する本企画。題して「真夜中の自由研究」です。今回は、推しを生き甲斐としてオタ活にいそしむアニオタ研究員が自分勝手に持論を展開します。
平成は痛車、令和は推し車?
これも推し活というかオタ活というべきなのか、私の日課のひとつに、X(旧Twitter)での推し情報パトロールがある。そんなXで不意に出会ったのが、海外オーナーのフォード「マスタング」だった。一気に目も心も奪われてしまった。そのマスタングはある人気漫画の原作シーンがボディ全面にひたすら描かれているもので、カラーでもなくモノクロなだけに、よりいっそう各場面の迫力が伝わってくるものだった。これは欲しい(やりたい)!?と、脳天にぶっ刺さってしまった……。
ところがあとで見返そう思ったら、その投稿は膨大なツイートの波間に消えてしまっていた。そうなるとオタクの執念というか性というか、必死でググっていると……似たようなクルマが。驚くことに、それはメルセデス・ベンツの車両で、しかも公式。え? 公式? と疑いながら検索してみると、ほかにもオタクゴコロをくすぐる車両の数々が出てくるではないか。意外にもメルセデスはサブカルチャーとのコラボレーションを連発しているメーカーでもあったのだ。
これまでのコラボとして漫画・アニメでは『ジョジョの奇妙な冒険』、『進撃の巨人』、『ワンピース』があり、『ドラえもん』も。ほかには『スーパーマリオブラザーズ』、『スター・ウォーズ』、『仮面ライダードライブ』、アーティストでは「YOASOBI」など、絶大な人気コンテンツたちとメルセデスは手を組んできた。
ファンならばコラボ商品は即予約の垂涎ものではあるが、コラボ相手が天下のメルセデスとなると金額的にもそう簡単にはいかないだろう。しかしゴリゴリのガチ勢なら金額なんて関係ない、なんとしてでも手に入れたいと思うだろうし、企画展示車のように売ってくれないものなら作ってやろうと考えるファンが世界中にいてもおかしくない。
かつてはインスタ映え、いまは推し活・オタ活映え
今や推し活といえばいわゆる「チー牛」みたいなオタク男子ばかりというイメージとは程遠い世界となってきている。コラボイベントなどはSNSの「いいね」目当てのキラキラした女子たちであふれていて、推しのためには綺麗な自分でいるし、オシャレして推しに“会いに行く”のが常識という世界なのだ(筆者の肌感)。
しかも、なんでオタクってあんなにお金を持っているの!? と世間が思うように、運営側もそこからいかに「献金」させるかが命題となっている。いつからかグッズは何でもランダム商法で、週替わりの入場特典やらキリがない。万単位の“大きなお友達”向けグッズだってオタク相手なら有り難がって完売するわけで。コロナ禍にオタクは日本経済の救世主とまで言わせたのは、400億円という前代未聞の興行収入を達成した映画『鬼滅の刃 無限列車編』である。もはや失われた30年と言われて失速した日本経済においても、オタク産業だけはその勢いが止まらない。そんな推しのためなら大枚はたいても惜しくない裕福なオタクを世界的な大企業がほっとくわけもなく。
とはいえ、世界的ラグジュアリーカーメーカーであるメルセデスという看板を背負っている以上、何でもコラボすればいいというわけではない。あくまで上質感を追求するブランドであり、富裕層を顧客にもつイメージに傷をつけるわけにはいかない。しかしそんなメルセデスだからこそインスタ映えには貢献してきたが、かえってそれが一部の消費者層を遠ざける結果になった感も否めない。時を経て、インスタ映えも今はハイブランド自慢よりも、オタ活自慢の場として隆盛を極めている。その機運をメルセデスも逃すわけがなく、これまで苦手としてきた層へのアピールとしてサブカルコラボに乗り出しているのかもしれない。