1964年にインディアナポリス・モーターウェイ博物館へ寄贈
さて1955年に、そのレース活動を終えた「0009/54」は、その後どのような運命をたどったのだろうか。メルセデス・ベンツに残る記録によれば、W196R用に製作されたシャシーは15台分。このうち「0001/54」と「0015/54」は使用されることなく廃棄され、「0011/54」もまた実際にシャシーにフィットされることはなかった。
0009/54の運命が大きく動いたのは1964年9月、シュトゥットガルトのウンターテュルクハイム工場を訪れていた、アメリカ・メルセデス・ベンツ・クラブのウィルハイム・ビル・シュペーレ氏と、メーカーのフリードリヒ・シルトベルガー博士との間で、インディアナポリス・モータースピードウェイの敷地内に建設予定の新しい博物館へのレーシングカーの寄贈に関する会話が交わされた。
その交渉は見事に成立し、1964年10月、木箱に収納され、「インディアナポリス・モーターウェイ博物館への寄贈品」と刻印されたW196Rは、大西洋を渡ったのである。それから約60年、それは同博物館で大切に保管、整備され、1996年と2020年にはアメリア・アイランドのコンクール・デレガンスに、また2024年にはペブルビーチ・コンクール・デレガンスにも姿を現している(いずれも展示車としてで、コンクールのエントラントではなかった)。
今回の落札者は、F1史上で最も成功したモデルのひとつである本物の伝説といえるレーシングカーのオーナーであることに誇りを持つことができるだろう。その先進的でパワフルなエンジニアリング、他に類を見ないコーチワーク、そしてモータースポーツ界の2大スターによって駆られた素晴らしい歴史など、あらゆる面で最高のヒストリーを持つモデルにほかならないのだから。
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