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フォード初代「マスタング」は大雑把だけどヒロイック! アメリカ人の心の友は日本人にとっても魅力的でした【旧車ソムリエ】

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 神村 聖(KAMIMURA Satoshi)

  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:1964年に発売された初代マスタングは発売後わずか1年11カ月で100万台を販売
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:当時のフォードの最廉価大衆車「ファルコン」からコンポーネンツの大部分を流用していた
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:「1967年モデル」として初めて軽度のフェイスリフトが施された世代にあたる
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:映画『ブリット』(1968年)にてスティーブ・マックイーンが走らせた「GT390」と同じマスクが与えられた
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:左右フロントフェンダーにはスモールブロック最大の「302(立方インチ=約5.0L)」のバッジが取り付けられているものの、現車が実際に搭載するのは289立方インチ、つまり4.7LのスモールブロックV8エンジン
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:タイヤサイズは21//70R14
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:ボンネットにはエアスクープが備わる
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:この時代の空調装置といえば三角窓
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:左右リアフェンダーにはガーニッシュが備わる
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:リアの中央には洒落た給油口が備わる
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:リアの中央には洒落た給油口が備わる
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:当時の流行であるテールフィンのスタイルを取り入れている
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:長大なエンジンフード下に鎮座しているのは289立方インチ、つまり4.7LのスモールブロックV8エンジン
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:新車当時からオプションだったパワーステアリングは遊びが大きく、慣れないうちは真っすぐ走らせるのも苦労する
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:ガチャガチャした手応えの大きなATセレクター
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:速度計は120マイル(約193km/h)まで刻まれている
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:サイドブレーキは運転席の左側にレバーが備わる
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:メーター上部にワイパーの操作スイッチが配置
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:ダッシュ中央のラジオはPhilco製
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:助手席のダッシュパネルにも「MUSTANG」のスクリプト
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:ドアパネルのデザインは洗練されたもの
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:ゆったりとしたフロントシート
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:リアシートも実用的なサイズが確保されている
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:リアのトランクも容量たっぷり
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:かのフォード「GT40」にも影響を及ぼしたとされる同名のミッドシップ小型プロトタイプから、デザインエッセンスが引用されている
  • 1968年式 フォード 初代 マスタング:「1967年モデル」として初めて軽度のフェイスリフトが施された世代にあたる

1968年式 フォード マスタング

「クラシックカーって実際に運転してみると、どうなの……?」という疑問にお答えするべくスタートした、クラシック/ヤングタイマーのクルマを対象とするテストドライブ企画「旧車ソムリエ」。今回は、並みいるアメリカ車のなかでも特にアイコニックな歴史的傑作、フォード「マスタング」の初代モデルをピックアップ。そのあらましとドライブフィールについて、お伝えします。

アメリカの自動車史を変えた偉大なヒット作は、すべてのスペシャルティカーの開祖

1964年4月17日から開催された「ニューヨーク万国博覧会」の大会初日に発表されたフォード「マスタング」は、当時のフォード社長、リー・アイアコッカの企画によって生まれ、スポーティなスペシャルティカーという、現在にも至る新ジャンルの開拓者となった。

スタイリッシュなフォルムはスポーツカーのようにも映るが、その実は開発期間とコストを削減するため、当時のフォードの最廉価大衆車「ファルコン」からコンポーネンツの大部分を流用したクルマだった。アイアコッカは、「アメリカの民衆が好むのは純粋なスポーツカーではなく、スポーツカーのように見えるクルマ」という持論をもとに、「ホイールベースを詰め、タイトな後席を持ったファルコン」をコンセプトとしたという。

さらにフォード・グループ会長、ヘンリー・フォードII世からの「トリノで見たスポーツカーは、みな口が尖っていたから……」というリクエストに応え、イタリアのスポーツカーを思わせる迫力あるフロントエンドを持たせた。

マスタングとは「野生馬」を意味するアメリカ英語とのこと。また、第二次世界大戦後期に活躍した迎撃戦闘機「ノースアメリカン P-51 マスタング」にあやかったとも言われている。この名称自体は、1962年にフォード開発部門が製作し、かのフォード「GT40」にも影響を及ぼしたとされる同名のミッドシップ小型プロトタイプから拝借したもので、名前のみならず、そのデザインエッセンスも生産型マスタングに引用された。

発売からわずか1年11カ月で100万台の大ヒット

こうして正式リリースされたマスタングは、ノッチバッククーペの「ハードトップ」と「コンバーチブル」の2本立てのボディが用意。発売から4カ月後の1964年8月には、もっとも象徴的な「ファストバック」クーペも追加された。

また、標準装備を簡素にして本体価格を抑える代わりに、「フルチョイスシステム」の名のもと、オプションの組み合わせでバリエーションを構成する販売方式を採用。エンジンはスタンダードの2.8L直6 OHVから4.2LのスモールブロックV8 OHVまでが選択できた。

さらに、オートマチックトランスミッションやビニールレザー張りシート、ホワイトリボンの入ったタイヤなど多彩なオプションを用意したことで、おしゃれな街乗りパーソナルカーに仕立てることを可能としたいっぽうで、V8エンジンとスポーツ志向のオプションを選択すれば、スポーツカー顔負けのパフォーマンスを得ることもできた。

これは、アイアコッカによるマーケットリサーチの賜物であったのだが、彼らの目論みはみごと功を奏した。この選択肢の広さやスタイリッシュなデザインは大好評で、ベースとなった人気小型車ファルコンをも上回る大ヒットを獲得。発売1週間で、全米のフォードディーラーには400万人以上が来店し、とくにシカゴでは警察が出動するほどのパニックになった(!)というエピソードも残されている。

そして10万台と設定された年間目標販売台数に対して、発売初日だけで2万2000台を受注。さらに発売1カ月で10万台以上、発売後わずか1年11カ月で100万台を販売するまでに至ったのだ。

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