注目の6.6L V12エンジン初公開。プロトタイプのデモランも披露

デンマークのZENVO（ゼンヴォ） オートモーティブが、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードの初日に、次世代ハイパーカー「オーロラ（Aurora）」の世界初ダイナミックデビューを果たしました。完全新設計の6.6LクワッドターボV12「ミョルニル」エンジンが注目を集め、初のプロトタイプ「VP0」の走行が披露されました。価格や発売時期の正式発表はまだないものの、独自開発のカーボン製モノコック「ZM1」を採用し、徹底的に性能を追求した意欲作です。

完全なゼロから開発が始まったオール内製のハイパーカーの衝撃

発表会場全体が、オーロラに搭載されるゼンヴォ独自開発の6.6LクワッドターボV12エンジン「ミョルニル」の実演に注目した。このエンジンは、パートナーであるマーレ・パワートレイン社（MAHLE Powertrain）との協業により、ゼンヴォが求める性能基準を満たすべくゼロから設計・開発。調整や機械開発には、英国とデンマーク両国で技術者チームが尽力している。さらに駆動用3モーターも組み合わせている。

初公開となるプロトタイプ「VP0」は、“ハーレクイン”カモフラージュをまといながらも、市販モデルの最終ボディデザインを明らかにしている。この車両はオーロラの「Tur」バージョンと呼ばれる、よりクラシカルな外観を持つモデルだ。

ゼンヴォ会長のイェンス・スヴェルドロップ氏とグッドウッド リッチモンド公爵が、オーロラの新型エンジンに命を吹き込むセレモニーを行い、チーフエンジニアのハビエル・カストレーネ氏はグッドウッド・ハウス前でデモ走行を実施。イベント期間中、オーロラはスーパーカーパドックに展示され、さらなるデモランも行われた。

車体構造に関して、ゼンヴォは従来の枠を超える取り組みを行っている。スペインのマネージング・コンポジット社との共同開発により、まったく新しいカーボン製モノコック「ZM1」が誕生。F1や航空宇宙分野で使われる先進的な複合素材技術を駆使し、軽量化・安全性・剛性、そして極限の空力性能を実現した。

このモノコックには、クラッシュ構造体や全外装パネルまで含まれており、完全な“クリーンシート”設計。重量や寸法、空力パッケージの最適化を追求し、現代のハイパーカーとしてデザインも意欲的なものにした。

ゼンヴォの開発陣は、2023年に構想を公開して以来、技術・販売両面でのパートナーシップを強化しながら、内製化と独自技術に徹底的にこだわってきた。その結果、既存のプラットフォームやコンポーネントに依存せず、完全自社開発のハイパーカーとしてオーロラが誕生したのである。

スヴェルドロップ氏は、「オーロラは単なる新型車ではなく、真にユニークな存在。現代の自動車産業においても稀有な試みだ」と語る。

【AMWノミカタ】

オーロラの開発において、ゼンヴォが見せた姿勢は従来のハイパーカー市場に一石を投じるものだ。市販車ベースの流用や既存エンジンの改良ではなく、「完全なゼロからの設計」にこだわったことで、真に独立した技術力と開発哲学を示した。とくに6.6L V12クワッドターボの「ミョルニル」エンジンと、それを支える新設計のカーボンモノコック「ZM1」は、他社に対する明確な差別化要素である。

今回、マーレ社と開発したエンジン「ミョルニル」の名前は、北欧神話に登場する雷神トール（Thor）の武器である「ハンマー」の名前に由来し、古ノルド語で、「粉砕するもの」や「雷鳴・稲妻」という意味を持つ。オーロラがハイパーカーセグメントの常識を打ち破り、稲妻の如く輝く存在になることを期待したい。