ナローポルシェ・マーケットで高値を維持する人気のF型だったが
クラシックカー市場でいまも高値を維持し続ける「空冷ポルシェ911」。なかでも「ナロー」と呼ばれる初期型は、時代を超えて愛されるコレクターズアイテムです。1972年式「911T 2.4」が、2025年8月の名門オークション「ボナムズ・ザ・クエイル」に出品されました。イタリア納車の実質2オーナー車で、オリジナル塗装を保った希少な個体。注目の競売結果とともに、クラシック911が持つ独特の価値を改めて振り返ります。
356から初代911への進化は後継モデルではなく別のクルマだった
現在、スーパーカーの一角に数えられるポルシェ911。その元祖である「Oシリーズ」は、ポルシェにスポーツカーメーカーとしての地位を確立させた名作「356」に代わり、1963年9月のフランクフルト・オートショーにて「1964年モデル」の「Typ(タイプ)901」として登場した。
先代356のRRレイアウトと空冷水平対向エンジンを踏襲した以外は、新生ポルシェ901はまったく新しいクルマとなっていた。パワーユニットは「カレラ」系を除く356のOHVからシングルオーバーヘッドカムシャフトに変更され、水平対向シリンダーも4気筒から6気筒に増加した。排気量は約400ccアップの1991cc(2L)となり、最高出力は356時代の最高性能モデル「356カレラ2(2000GS)」と同じ130psをマークした。
いっぽう車体構造は、356のプレス鋼板プラットホームとボディシェルから、より近代的なフルモノコック構造に進化を遂げた。同時に、VW「タイプ1」をベースとする4輪トーションバーのサスペンションは廃止され、より現代的なマクファーソンストラットとトレーリングアームのレイアウトが採用される。
デビュー当初の車名「タイプ901」は、2桁目を「0」とする3桁の数字を商標登録していた仏プジョー社から公式に抗議を受けた。このため、シリーズ生産がスタートした頃には現在に至る「911」へと改名されている。その後もめまぐるしい改良が施され、1968年モデルの「Aシリーズ」では細部がブラッシュアップされるとともに、廉価版「911T」が追加された。1969年モデルとして登場した「Bシリーズ」では、911T以外の上位2モデルに燃料噴射が採用されたほか、ホイールベースは2211mmから2268mmに延長された。
1970年モデルの「Cシリーズ」および翌年の「Dシリーズ」では2.2L。1972年モデルの「Eシリーズ」および1973年モデルの「Fシリーズ」では2.4Lと、ボクサー6エンジンの排気量は少しずつ拡大されていった。
一般的に「ナローポルシェ」と呼ばれる1963年から1977年のポルシェ911のなかで、前後のバンパーが小さく、その分フロントのトランクフードが長いFシリーズ以前のモデルは、英語圏のポルシェ愛好家の間で「ロングフード」と呼ばれている。これらはもっともピュアな911として、またコレクターズアイテムとして、高止まり感のあるクラシックカーマーケットにおいて指標なっている大人気モデルである。





















































































































































































