驚異の最高速度302km/hのカタログ値!
世界一速かったスーパーカーの価値を問う
1970年代スーパーカーの頂点に立つフェラーリ365GT4/BBの「極上の一台」が、2026年1月、欧州系オンラインオークション「ブロードアロー・オークションズ」に出品されました。48年もの間ワンオーナーで大切に維持されており、走行距離はわずか約4万1000km。さらに約1400万円をかけた大規模な機械的整備済みという、まさに理想的なコンディションです。最低エスティメート(推定落札価格)は約8250万円でした。ところが落札されず、流札に終わってしまったのです。あの伝説の365BBですら、”億超え”の壁はそうとう高いのかもしれません。
マラネロ初のミッドシップ縦置き12気筒!365BBの意外すぎる名前の由来がユニーク
1971年にコンセプトカーとしてショーデビューし、1973年に正式発表された365GT4/BBは、12気筒ストラダーレ(公道走行モデル)としてはフェラーリ初となるミッドシップ車だった。1970年代後半に日本を席巻したスーパーカーブーム時代には、宿命のライバル「ランボルギーニ・カウンタックLP400」と覇権を争った一台だ。
現代の目でも見惚れてしまうほど斬新なスタイルと、ディーノ206/246GTを想起させる古典的なエレガンスを併せ持つボディは、1968年にピニンファリーナが発表したスタディモデル「P6」の市販型とも言われている。ちなみにDINO206GTは1967年デビューだから「マラネロ初」ではあるが、当時はフェラーリブランドして世の中に出したわけではない(DINOブランド)から、1973年デビューした365GT4/BBがフェラーリとして初の量産ミドシップカーとなる。

有名なペットネーム「BB(Berlinetta Boxer=ベルリネッタ・ボクサーは2ドアクーペのボクサーエンジンの意味)」が示すとおり、先代モデル「365GTB/4 デイトナ」用に新設計された排気量4390ccの60度V型12気筒4カムシャフトエンジンを搭載。そのVバンク角を180度まで拡大したボクサーエンジンに、4基のトリプルチョーク式ウェーバー製キャブレターを組み合わせ、380psのパワーを発揮する。
パワートレーンの前後長を短く抑えるため、エンジン直下に2階建て構造で配置された5速MTを介して後輪を駆動。カタログ最高速は302km/hを公称していた。ただしこの数値は、365BBデビューの半年前に最高速度300km/hを標榜したカウンタックLP400を上回ることだけを目的に設定された”政治的数値”との見方が、今や定説になっている。もっとも、そのような背景があったとしても、BBの魅力を損なうものでは決してない。
余談ながら、「BB」という車名については別の説もある。近年逝去した往年のスター女優、「BB(ベベ)」こと故ブリジット・バルドーのセクシーなボディラインからインスピレーションを得たというエピソードがあり、開発スタッフたちは彼女の愛称をコードネームとして使い、それがそのまま車名になったというのだ。当時のピニンファリーナおよびフェラーリの内情を知る人物の証言によれば、「ベルリネッタ・ボクサー」は後付けのイニシャル合わせであり、もともとの命名理由こそがこのエピソードだという。いずれ覆されるかもしれないが、なんともイタリアらしい興味深い話だ。
365GT4/BBの357番目製造の最終仕様!?
ドイツで47年間ワンオーナーの元過ごす!
このほどブロードアロー・オークションズ「Global Icon Europe 2026」セールに出品された1976年型フェラーリ365GT4BBは、シャーシNo.18709。わずか387台が生産された365BBのうち357台目であり、1976年に改良型「512BB」が導入される直前に製造された最終モデルの一台といえる。
1975年9月に工場を出たこの左ハンドル仕様車は、「アルジェント(シルバー)」の塗装に「ネロ(ブラック)」のレザー内装という洗練されたコンビネーション。その優雅さは、50年を経た現在もまったく色褪せていない。

西ドイツの伝説的フェラーリ正規ディーラー「オート・ベッカー」社が発行し、今なお保管されているオリジナルの納品書によると、この365BBは1975年12月1日に西ドイツ・デュッセルドルフへ新車として納品されており、当時の価格は8万3250ドイツマルクだったと記されている。
スタンプ入りのオリジナルサービスブックレットには、初代オーナーのもとベルリンで過ごした極初期の記録も残されており、1970年代半ばにフェラーリ正規の「アシステンツァ・クリエンティ(顧客サービス)」部門が押した整備スタンプも確認できる。
当時のエキゾチックカーとしては極めて異例なことに、この365BBは初代オーナーのもとで48年間にわたって大事に維持されてきたことがわかる。2023年11月に2代目オーナーへ引き継がれた時点での走行距離は、約4万1000kmだった。



































































