過走行でもオリジナル状態を90%以上維持する最高ランク「AA評価」を獲得したオリジナル度の高さ!
ダッラーリオの死去から数年後、アルフィエーリからのフレンドリーなメッセージに記されているように、家族は信頼できる人物にマセラティ「ギブリ」を売却したいと考えた。そのときトラッリが現在のオーナーを紹介し、十分な話し合いを重ねたのち、2010年にそのクルマを購入することになったのである。
ダッラーリオ家から購入した2人目のオーナーは、何よりもそのオリジナリティに魅了されたという。そして譲り受けたとき、イタリアのマントヴァからベルギーまでマセラティ「ギブリ」をドライブして帰り、彼の膨大なコレクションのなかでもお気に入りの1台となったそうだ。
運転が好きだったようで、ローマやイギリスへの長距離ツーリングにも使用された。一度もトラブルに見舞われることなく、そのドライブにおける走行距離は1万kmを超え、オドメーターは10万kmを突破した。クルマの歴史を尊重するオーナーは、2018年にイタリアのトラッリに1万2000ユーロ(約198万円)をかけた大規模な整備を依頼し、その際の詳細な請求書も保管されているという。
マッチングナンバーで、レストア歴はなし。ただし、5桁のオドメーターには1万3877kmが表示され、さらに10万kmの走行距離がこれに加算されている。マセラティ「ギブリ」は日本的に言えばいわゆる過走行の部類に属するが、シャシー番号1184のこのクルマは、驚くほど良好なオリジナルコンディションを保っている。もちろん工具キットなども当時のままだ。
この個体は、国際的な権威を持つクラシックカー認定機関の厳格な審査において、工場出荷時のオリジナルの状態を90%以上維持している車両にのみ与えられる最高ランク、「AA」の評価を獲得しているクルマだ。アメリカ流が好きな人は、そのシートを見た瞬間に張り替えを希望するかもしれない。しかしオリジナルを重視する人にとって、この刻んできた年輪こそが重要なのである。
ブロードアロー・オークションズはこのマセラティ「ギブリ」に対して、12万〜16万ユーロ(邦貨換算約1980万〜2640万円)というエスティメートを設定した。しかし実際の落札価格は、エスティメートの下限にわずかに届かず、11万2750ユーロ(邦貨換算約1860万3750円)にとどまった。
歴史を刻んだ美しいヤレ具合や、AA評価という由緒正しい血統は頭で理解できても、いざ大金を支払う段になると「やっぱりピカピカにフルレストアされた新車同然のクルマがいい」と尻込みしてしまう。そんなオークション参加者たちのリアルな本音が透けて見えるような、少し皮肉な結果である。だが裏を返せば、オリジナル至上主義の真価を理解する新しいオーナーにとっては、これ以上ない最高のバーゲンプライスになったという「オチ」がついたと言えるだろう。
※為替レートは1ユーロ=165円(2026年4月1日時点)で換算



























































































