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「スカイラインの父」からの手紙 制限の中でこそ生まれた理想のスカイラインGT-Rとは? 【櫻井眞一郎没後15周年特別寄稿vol.1】

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TEXT: 山崎真一(YAMAZAKI Shinichi)  PHOTO: GT-R Magazine  FACT CHECK: 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)

  • わずか197台が生産されたケンメリGT-R。排気量2ℓのS20型エンジンを積む第1世代GT-Rの最後のモデルとなった
  • ハコスカGT-R。左がハードトップ(KPGC10)、右がセダン(PGC10)で、ともに「2ℓの枠の中で最高の性能を」という櫻井哲学を体現した存在だ
  • インタビューを受ける櫻井眞一郎氏。「GT-Rはスカイラインの集大成にすぎない」という信念は、没後15年を経たいまも色褪せない
  • カムカバーに「2000」の刻印が誇らしげなS20型エンジン。3連キャブレターを備えた直6 DOHCは160psを発生し、国内レースでの活躍に貢献した名機だ
  • 歴代のスカイラインとともに収まる櫻井眞一郎氏。子どもたちを前にした父のような雰囲気がある。

「櫻井眞一郎没後15周年特別寄稿」スカイラインの父からの手紙

「スカイラインの父」「ミスタースカイライン」と敬意を込めて呼ばれてきた2代目〜7代目までスカイラインの開発責任者を務めた櫻井眞一郎氏が世を去って、2026年で15年を迎えます。若手エンジニアとして足回りを担当した初代スカイラインから7代目R31型の途中まで開発に携わった氏の言葉を、生前のインタビューをもとに改めて辿ります。スカイラインGT-Rに氏が描いた理想とは何だったのか。その答えは、排気量という枠の中にありました。

GT-Rとは2リッターの枠のなかで、どれだけの性能を出せるかに挑戦したクルマだから大排気量かには反対

皆さんが最近「GT-R、GT-R」と口に出されるが、多くの方が思い描いているGT-Rというのは、R32型から始まり、R33、そしてR34と続く系譜のクルマのことなのだろう。それに対して、さまざまな期待や要望が寄せられているのだと思う。

しかし、わたしの考えるGT-Rというクルマは違う。GT-Rとはベースとなるスカイラインという枠組みのなかで、2Lという排気量を超えないという制約のもと、どれだけの性能を出せるかにチャレンジした存在だ。その性能を余すことなく活かしきる足まわりを備え、それが人間の手足の力強い延長にある。そうした思想を具現化したのがGT-Rなのだ。

正直に言えば、GT-Rのエンジンがあれだけ大排気量化していくことには、私個人としては反対だ。大きいエンジンを搭載し、それに見合う足まわりを組み合わせれば、誰にでも速いクルマが作れる。フィーリングをよくすることも難しくはない。

スカイラインの本質は、最もベーシックなグレードに宿っている。逆三角形のピラミッドでは本質は見えてこない。

「2Lの排気量でスカッと抜けるような気持ちのいいフィーリングを持つクルマ」

それを突き詰めてきたのがGT-Rだった。ところが、いつの間にか「速ければいい」ということが前面に出てしまっている。だから、わたしはスカイラインを語るのはいいけれど、GT-Rを語るのはあまり好きじゃないのだ。

そもそも、スカイラインというクルマを表しているのは一番ベーシックなクルマだ。宣伝にも「まずは安いクルマを知れ」とよく言っていた。クルマの良さをお客さまに理解していただいたうえで、ディーラーにお越しいただいて「もう少し上がないのかな? 」「もっと力強いクルマがほしい」という要望が聞こえてきて初めて、上級グレードをお勧めする。そうしたピラミッド型の商品構成を理想としていた。

ディーラーから勧めるのではなく、お客さま自身が一段一段、そのピラミッドを登っていく。それが本来あるべき姿だ。しかし、今はGT-Rばかりが取り上げられて、すっかり普通のGTは影を潜めてしまった気がする。見向きもされなくなったといっても言い過ぎではないだろう。逆三角形のピラミッド構図になってしまっては、スカイラインの本質は見えてこない。わたしの考える理想像からは道を外れてしまっていることを残念に思う。

今のモデルは、もはやスカイラインじゃなく、GT-Rというクルマなのだ。そのきっかけを作ってしまったのがR32型で、R32・R33・R34はスカイラインではなく、GT-Rと名乗るべきだったのではないだろうか

「わたしは2Lの枠を超えない」

これは徹底して守っていた。

また、スカイラインは基本的に輸出を前提としない国内専用のクルマだ。だから、3ナンバーは要らないわけだ。日本の道路事情に最適な5ナンバーのなかで、最高のクルマを作ろうと頑張っていた。あくまでもGT-Rはその集大成でしかないのだ。

排気量の大小ではなく、大切なのは「いいクルマを作ろう」という意識だ。枠やルールがあっての競争だ

だから、わたしはGT-RのCMを打たせなかった。また、2Lの枠組みがあったからこそ、スカイラインは高く評価されたのではないかと思っている。もし、単純に排気量を大きくしていたら、評価がまったく違うものになっていた、そんな気がしている。

誤解してほしくないのは、わたしは排気量が2Lでなければならなかったわけではないということだ。例えば1.5Lでもよかった。重要なのは、一定の枠の中で「日本のクルマをここまでにしよう、いいクルマ作りをしよう」という意識だった。枠がなく、好き勝手やれでは面白くない。レースもそうだが、枠やルールがあっての競争だ。その中でいろいろ工夫するから意味があるのだ。

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  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 山本 亨(YAMAMOTO Tohru)
  • 1960 年生まれ 大学卒業後ベストカーガイド編集部勤務。1990年オートスポーツ誌に転職、1992年F1速報誌(アズエフ)編集長。1995年月刊ビデオマガジン編集部に転職、1996年ベストモータリング編集長(のち局長兼務)。2005年ネコパブリッシング・イベント本部長/4輪編集局長兼務。2015年交通タイムス社に転籍、2020年より現職(総編集局長)自動車の分野に問わずオールマイティだが、特に旧いモータースポーツとクラシックカーに造詣が深い。愛車は1969年DATSUN Fairlady SRL311/YAMAHA RD250ほか

 

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