鬼才クリス バングルが手がけた革新的デザイン
1980年代から1990年代にかけて生産されたヤングタイマーの準クラシックカーでは、とくにスポーツモデルの価格高騰が近年目立っています。かつての中古車市場では想像もできなかったほどの高値で取引されることも珍しくありません。今回は2026年3月にイギリスで開催されたオークションに出品されたフィアット「クーペ フィアット」のモデル詳細と、その落札結果から現在の市場価値について解説します。
ピニンファリーナと合作した秀逸な内外装スタイリング
2026年3月21日と22日、英国のクラシックカー専門誌「Practical Classics」誌が主催するトレードショー「The Classic Car and Restoration Show 2026」に際して、英国アイコニック オークショネアが開いたイベント公式オークションでは、2020年代前半から人気を上げているフィアット「クーペ フィアット」が出品されていた。
1993年11月のボローニャ モーターショーにて世界初公開されたクーペ フィアットは、1990年代初頭の欧州で大ヒットを博していたVW「コラード」やオペル「カリブラ」らのドイツ製4座クーペに対する、フィアットの回答である。クーペをブランド名であるフィアットの前に立てる倒置的なネーミングからして、フィアットの確たる自信が垣間見られた。
車体の基本構造は、フィアット グループの「ティーポ2」プロジェクトに準ずるもので、フロアパンは同時代のフィアット「ティーポ」やランチア「デルタ(二代目)」、アルファロメオ「145」などと共通のものである。
一方エンジンは、1966年のフィアット「124」用に端を発し、設計者であるランプレーディの名から「ランプレーディ ユニット」とも呼ばれる直列4気筒の最終進化版だ。同時代のランチア「テーマ」や「デルタHFインテグラーレ」などにも搭載されたDOHC 16バルブのヘッドが与えられ、三菱式のバランスシャフトを設置。排気量は1995ccで、NA版で140ps、ターボ版では190psをマークした。
しかし、クーペ フィアットの真骨頂は、イタリア車の身上であるボディデザインにあった。前後フェンダーを走る2本の鋭利なラインなどの革新的なデザインと、1950年代から1960年代のレーシングカーを思わせるアルミ削り出し燃料キャップなどのクラシカルなディテールの対比が醸し出す魅力は、デビュー当時から大きな話題を呼んだ。
この鮮烈極まりないスタイリングは「フィアット チェントロ スティーレ(フィアット社内デザインセンター)」と名門「ピニンファリーナ」がコンペで争った結果、当時チェントロ スティーレに在籍していたアメリカ人デザイナー、クリス バングルのデザインが採用されたとのことである。
ただしボディ同色のパネルを大胆にあしらった秀逸なインテリアは、ピニンファリーナのデザインによるもので、車両の組み立てにもピニンファリーナの工場が関与したことから「pininfarina」のロゴバッジが車体内外に取り付けられていた。
かくして1994年から発売されたクーペ フィアットは、ヨーロッパ市場を中心にヒットを得た。また、エモーショナルなデザインは日本国内でも高く評価され、1995年度グッドデザイン賞金賞を受賞している。
1996年にはマイナーチェンジが行われ、1.8リッターの4気筒NAを搭載した廉価版が加えられたほか、とくに2.0リッター版はドライバビリティとパワーを向上させた新世代の直列5気筒DOHC「スーパーファイア」ユニットに換装された。気筒あたり4バルブだったことから「20V」と名づけられた。排気量は1996ccで、パワーは自然吸気版が147ps、ターボ版では220psを発生。このパワーに備えて、ディスクブレーキにはブレンボ製キャリパーも備えることになる。









































































































