ショート専用サイドパーツがない難題を、純正AMGラインの流用で解決した1台である
市販の社外パーツではショートボディ用のサイドパーツが手に入らない。この難題に、京都のメルセデス・ベンツ専門店「MBワークス」は純正オプションのAMGラインを流用して答えを出した。ベースはW223型Sクラスのショートボディ。狙うは最上級パフォーマンスモデルの“AMG S63”ルックである。カスタムの一手ごとに、メルセデスを知り尽くしたショップならではの計算が光る。
MBワークスがW223型SクラスのショートボディをAMG S63仕様に仕上げた狙い
MBワークスが掲げるのは、メルセデス本来の魅力を最大限に引き出し、オーナーごとにオンリーワンの1台を仕立てることだ。今回のテーマは、最上級パフォーマンスモデルだけがまとう特別な空気感を、あえてスタンダードなSクラスへ移植すること。ノーマルの端正さを土台にしながら、AMG S63を思わせる緊張感をどこまで高められるか。その一点に、このコーディネートの狙いが込められている。
Sクラスといえば高級セダンの原器とも呼ばれる存在で、日本市場ではロングボディが主流となる。あえてショートボディをベースに選び、よりスポーティなAMG S63の世界観へと振り切ったところが、このクルマの見どころである。
ショートボディでAMG S63のサイドフォルムを作る難題をどう解決したのか
このクルマを作る過程において最大の壁となったのが、サイドフォルムである。AMG S63のスタイリングをショートボディで再現しようとしても、社外パーツにはショートバージョン用のサイドパーツが存在しない。そこでMBワークスは、メーカーがオプション設定するAMGラインのパーツを流用し、ショートボディのAMG S63に必要なサイドシルエットを組み上げた。純正オプションを知り尽くしているからこそ選べる手法である。

使用したAMGフォルムには、クロームメッキ部分をダーククロームに置き換えるナイトパッケージを採用した。その理由は、ブラッシュド+クリアコート仕上げのハイパーフォージド(HYPER FORGED)ホイールを際立たせるためである。ツイン5スポークのホイールを主役に据え、周囲のトーンを落とすことで足元の存在感を引き立てる。ストッピングパワー(制動力)とスタイリングの両立をねらい、ブレーキはAMGブレーキキットへと交換した。フロントには外装エアロキットにあわせ、パナメリカーナ・グリル(AMG特有の縦ルーバーグリル)を装着している。純正のレーダーシステムが誤作動を起こさないよう、装着時には慎重にセッティングを詰めた。
ロワリングキットとマフラー中間ストレートで狙ったSクラスらしい走りと音
足まわりには、ロワリングキットを組み込んだ。低すぎない絶妙な車高に落とし込んだのがポイントで、あくまでSクラスの走りを意識したセッティングとなる。見た目のためだけに極端に下げるのではなく、ラグジュアリーセダンとしての快適性と佇まいのバランスを取った作り込みである。
サウンド面では、エキゾーストマフラーの中間部分をストレートに変更し、低音域を強調した。車内にこもるような音ではなく、車外で聞いて心地よい音質へと調律しているのが特徴である。派手に響かせるのではなく、Sクラスの品格を崩さない範囲で官能性を加える。ここにもメルセデスの性格を理解したチューニングの姿勢が表れている。

ショートボディという素材の個性を生かしながら、サイド、足元、フロントフェイス、そしてサウンドまで一貫してAMG S63の世界観でまとめ上げた点にMBワークスの技術が光る。既存パーツの寄せ集めではなく、純正オプションの知識と細部の調律で成立させた1台と言える。


































