ユーティリティ以外にも開発陣のこだわり満載だった
ちなみに広告展開時のコピーは「恋愛仕様。True Love」。TV-CMにはエルトン・ジョン&キキ・ディーのデュエットによる同名のスローバラード曲が使われた。もちろん甘々なラブソングである。
ところでカタログも当然ながらふるっていた。初版の表紙はクルマのイメージカラーだったパッションオレンジ・メタリックのオレンジを全面に敷いたインパクトのあるもの。ところがページを開くと今度はモノクロ写真に、アクセント色を使って各パートごとのアピールポイントが書かれている。だが、それらは書き出すと、堂々仕様/快走仕様/信頼仕様/協奏仕様/空創仕様/光彩仕様……と、ややクセのある漢字4文字で表記。
たとえば協奏仕様とは、直径65mmの大径エクゾーストパイプを採用するなどして高速域での加速性能の向上と伸びやかでクリアな排気音を達成していることの説明なのだが、目次には「恋をすると、風も雨も波もモーツァルトになる」とあったりする。
じつはS-MXの開発メンバーは、後のホンダ車の開発上のキーマンとなる人物だらけで、平たく言うと濃い人ばかり。そうした人たちが、オレに言わせろ的に直訴しているのが目に浮かぶようだが、(開発者の顔ぶれを知っていると)そうした濃密なメッセージにあふれたカタログでもあった。
メーカー純正のローダウン仕様もラインナップ
なおデビュー当初からあった車高が15mm低められたローダウン仕様はカタログが別刷りとなっていて、コチラは黒地の表紙でページをめくるとテーマの「カフェレーサーになろう。」のフリーハンドの文字が現れる。
一方でホンダアクセスによる純正アクセサリーカタログも全34ページの厚口。アメリカン・カスタム、ネイチャー・トレックといったテーマごとのアイテムの紹介、さらに黒革調を始めとしたシートカバー、ギャザズ(Gathers)のオーディオ&ビジュアルなど充実したアイテムが載っている。
ちなみに本機のカタログは1997年9月のマイナーチェンジでは白地にオレンジのS-MXのロゴが配されたものに。さらに1998年5月版では地色がシルバー、S-MXのロゴはこのときの新色のルビーレッド・パールに。手元には1999年(標準車の定員が4名→5名に)、2000年(全体的にお買い得仕様に)のカタログまであるが、やはりデビュー当初の頃のほうが勢いがあったのは、今、カタログで振り返ってもわかる。