トゥーリングの流れをくむカロッツェリア・マラッツィが手がけた
控え目なイスレロのボディはカロッツェリア・マラッツィが生産したが、このコーチビルダーがマイナーだったことも注目度の低さに拍車をかけていた。350GTおよび400GT 2+2のボディ生産はカロッツェリア・トゥーリングが担当したが、イスレロが誕生したときにトゥーリングはすでに操業を停止。トゥーリングにいた従業員の多くが同社のデザイナーだったマリオ・マラッツィが率いるカロッツェリア・マラッツィに転職したといわれている。カロッツェリア・マラッツィは、1967年創業で、トゥーリングの仕事を引き継ぎ、スーパーレッジェーラ工法を取得していたことでイスレロのボディを手がけることになったそうだ。
そのようなマニアックなエピソードを有していたイスレロの最大の魅力は、ランボルギーニの最初のコンセプトカーである「350GTV」が採用していたリトラクタブルヘッドライトを持っていた点で、この部分から子どもたちは超微量だがスーパーカーらしさを感じ取ることができた。
1969年式イスレロSは2800万円で落札
販売が不調で、その状況を打破するために高性能版である「イスレロS」も登場したが、やはり多くの人から注目を浴びることはなく、イスレロは短命モデルとなってしまった。そのため生産台数が226台と極めて少ないが、去る2022年2月にRMサザビーズが開催した「PARIS」オークションでは1969年式ランボルギーニ イスレロSが21万8500ユーロ(当時レートで邦貨換算約2800万円)で落札されている。
「神は細部に宿る」という言葉の奥深さや、鍋の中に入っている春菊の美味しさと同じように、イスレロには子どもには分からないが大人になったからこそ理解できる魅力がある。半世紀以上が過ぎた現代の交通環境の中でさりげなく使うと粋なクルマだと思う。
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