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トヨタ「GRヤリス」はさらにドライバーへ寄り添うクルマへ! 走り最優先の改良に脱帽です【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: TOYOTA GAZOO Racing

  • GRヤリスのリア
  • 競技で役立つ縦引きパーキングブレーキ
  • ドライバーズファーストで改良されたインパネ
  • エンジントルク図
  • エンジントルク図
  • ドライブモードセレクト(NORMAL/ECOモード)
  • シフトアップのタイミングで青い点滅表示となる
  • 緑のランプで回転の上昇を把握し、赤でシフトアップタイミングが近いことを認識
  • 新開発8速ATの「GR-DAT」
  • 進化型GRヤリス(日本仕様、プロトタイプ)
  • フロントバンパーの造形は変更された
  • コックピット イメージ画像
  • テールランプのデザインも変更されている
  • 進化型GRヤリス(日本仕様、プロトタイプ)

ドライバーズファーストを優先した改良

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「GRヤリスのマイナーチェンジ」についてです。トヨタがWRCに参戦するベース車でもあるGRヤリスがマイナーチェンジしましたが、その改良内容は見た目の大きな変更というよりも、パフォーマンスアップがメインとなっています。ドライバーに寄り添う改良が施されたGRヤリスについて語ります。

すべては最高のパフォーマンスを引き出すために

かつてこれほどドライバーファーストのクルマがあったでしょうか。クルマの作り込みの細部にわたって、実際にステアリングを握るドライバーの感覚に寄り添っています。そんな衝撃のモデルが、今回マイナーチェンジが施されたトヨタ「GRヤリス」なのです。

はっきりいってトヨタ史に刻まれる歴史的な1台だと思いました。公式的には、既存のモデルに手を加えただけのささやかな変更に過ぎないように思えます。プラットフォームもエンジンも基本的には変更がありません。冷たい言い方が許されるならば、ただのマイナーチェンジです。

外観を眺めても劇的な変更は見当たりません。空力特性や冷却特性を高める細部のチューニングにはマイナーチェンジの痕跡が発見できますが、印象としての差は少ない。

ですが、そのファーストインプレッションはものの見事に僕の想像を超えました。大胆な中身の刷新は劇的でフルモデルチェンジに近いレベルに達しているのです。とくに、トヨタ自動車の豊田章男会長兼マスタードライバーが提唱するドライバーズファーストの具体化ですね。その衝撃は凄まじい。

搭載する直列3気筒1.6Lターボは、272ps/370Nmだった出力を304ps/400Nmまでスープアップ。ボディ剛性やサスペンション取り付け剛性を引き上げるなどした効果で、圧倒的に洗練された走りと速さを手にしています。

速い。そして乗りやすい。モータースポーツベース車両ともいえるスパルタンなモデルですから、足まわりが締め上げられていることは予想の通りですが、このクルマの魂は、そんな表層的な観察では説明がつきません。すべてがステアリングを握りコーナーに挑むドライバーの意見を取り入れているのです。

豊田章男マスタードライバーの意見だけではなく、実際にGRヤリスでレースに参戦、あるいはラリーを戦う競技ドライバーのアドバイスを注いでいるというから腰を抜かします。

走りのためにフロアマットまでこだわる

たとえば、シート高は素早いペダル操作がしやすいように従来モデルから25mm低く組み込んでいます。路面を確認しながら走るラリーでは視界の広さも重要です。そのためにルームミラーの位置をずらし、ダッシュボードを低い造形に変更。瞬間的なモアパワーを得るための武器であるインタークーラースプレーは、そのスイッチの位置がハードドライビング中に操作しやすい位置に近づけられました。フロアマットも、ペダル操作の障害にならないような素材と形状に改められています。

各種スイッチ類の配置や操作イメージ

ドライバー目線の改良をあげればキリがありませんが、まだまだ紹介を続けましょう。

回転計はデジタルで表示されますが、シフトアップのタイミングはメーター上の液晶が点灯して知らせるものに改められました。赤くフラッシュしたらシフトアップするスタイルは、いちいち回転の上昇を表すタコメーターの針を目で追っていられない競技ドライバーのために開発されたものです。レーシングマシンのそれと酷似しています。

限界域での走行直後には、エンジンをクーリングする必要があります。そのための冷却方法も、効率を高めています。アクセルペダルを踏み抜き、限界までパフォーマンスを発揮させることのできるドライバーのための機能なのです。

といったように、実際にレースやラリーに参戦する豊田章男マスタードライバーの感性に加え、競技ドライバーの良い意味での「わがままな」リクエストを取り込んでいるのです。これはもう、究極のドライバーズファーストカーであるばかりか、公道を快適に走ることのできるワークスマシンでもある。魂はコンペティションの世界にあるのです。

このクルマが、いやマシンと呼ぶのが相応しいGRヤリスを表現する象徴的な機能を紹介しましょう。

競技ベース仕様的なRCグレードは、競技用ドリフトマシンやラリーマシンで常識のサイドブレーキレバーに変更されています。それはドライバーの掌のそばにまで床から生えています。日常では駐車する時にしか必要のないレバーですが競技中には頻繁に、そして素早くサイドブレーキレバーを引くことで、マシンをスライドさせることができます。そんなアクロバティックな操作がしやすいよう、あらかじめ細工されているのです。

いまだかつて、これほど限界ドライビングのために開発されたモデルはありませんでした。まさに豊田章男マスタードライバーが提唱するドライバーズファーストの具体なのです。トヨタが覚醒したと言ってもいいかもしれませんね。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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