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50台限定のシェルビー「コブラ」は純正レプリカでも約2300万円で落札! プライスが伸びなかった理由はボディにあった?

50台限定のシェルビー「コブラ」は純正レプリカでも約2300万円で落札! プライスが伸びなかった理由はボディにあった?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

FRPボディは、アルミボディよりも評価が低くなる?

このほどRMサザビーズ「ARIZONA 2025」オークションに出品されたコブラ 289FIA 50周年記念エディションは、50台が限定生産された中の33台目。FRPボディを与えられ、ヴァイキング・ブルーにホワイトのドライバーズストライプとゼッケン50のラウンド・ラベルで仕上げられている。

このオークションの公式ウェブカタログ掲載時の走行距離は29マイル(約47km)で、基本的に納車されたときのままのコンディションである。

シャシーにはサーキット走行も可能な直径3インチの「ドローンオーバー・マンドレル」チューブラーフレームを採用。パワーユニットはフォード製302立方インチ(約5.0L)V型8気筒エンジンを、ストロークの延長によって363立方インチ(約5.95L)にアップしたものを搭載し、伊「ウェーバー」社の加速ポンプつき48IDAキャブレター4基を組み合わせて、500psの最高出力と61.1kgmのトルクを発生する。

また「TREMEC TKO600」型5速マニュアルギアボックスと、コブラ用アルミボディの製作でも知られるカーカム・モータースポーツ社製「TorqueTrak」デフを介して、スピンナーで固定するセンターロック式の「ハリブラント」風のリアホイールにパワーを伝達する。

走行距離はきわめて少なく、コンディションも新車同様だが……

いっぽうディテールにも気を配られ、ウッドリムのステアリングホイールにポリッシュ仕上げのモンツァスタイルのフューエルフィラー、「スチュワート・ワーナー」のメーター、ダッシュボードに取り付けられたバックミラー、FIA仕様のロールバー、サイドエキゾーストなど、時代を反映したディテールがふんだんに盛り込まれている。

「アメリカンレースの歴史のなかでもっとも魅惑的なチャプターのひとつを祝う、この息をのむようなコブラ 289FIA 50周年記念エディションは、ミッドセンチュリーのロードレースの時代を超えた魅力を渇望するエンスージアストに、比類ない没入感のあるドライビング体験を提供する」

RMサザビーズ北米本社ではそんな自信ありげなアピール文を添えつつも、20万ドル〜25万ドル(邦貨換算約3140万円〜3925万円)というかなり控えめなエスティメート(推定落札価格)を設定。そして2025年1月25日に迎えた競売では、エスティメート下限を大きく割り込むうえに、このモデルの相場としては比較的安価な14万8250ドル、日本円にして約2300万円という落札価格で、競売人の掌中のハンマーが鳴らされることになった。

製造社は創業者の正統性を有するシェルビー・アメリカン社。しかも高値で取引される事例の多い限定バージョンで、走行距離はきわめて少なく、コンディションも新車同様。にもかかわらず、アメリカやイギリスであまた作られている「市井の」コブラ・レプリカと大差ない価格は、おそらく出品者側にとっては不本意だったかと思われる。

そして、この安値に終わった理由もひとつふたつではないだろうが、コブラ・レプリカの世界でも低く見られがちなFRPボディだったことが、無視できない要因として挙げられるのでは……? と推測されるのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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