FRPボディは、アルミボディよりも評価が低くなる?
このほどRMサザビーズ「ARIZONA 2025」オークションに出品されたコブラ 289FIA 50周年記念エディションは、50台が限定生産された中の33台目。FRPボディを与えられ、ヴァイキング・ブルーにホワイトのドライバーズストライプとゼッケン50のラウンド・ラベルで仕上げられている。
このオークションの公式ウェブカタログ掲載時の走行距離は29マイル(約47km)で、基本的に納車されたときのままのコンディションである。
シャシーにはサーキット走行も可能な直径3インチの「ドローンオーバー・マンドレル」チューブラーフレームを採用。パワーユニットはフォード製302立方インチ(約5.0L)V型8気筒エンジンを、ストロークの延長によって363立方インチ(約5.95L)にアップしたものを搭載し、伊「ウェーバー」社の加速ポンプつき48IDAキャブレター4基を組み合わせて、500psの最高出力と61.1kgmのトルクを発生する。
また「TREMEC TKO600」型5速マニュアルギアボックスと、コブラ用アルミボディの製作でも知られるカーカム・モータースポーツ社製「TorqueTrak」デフを介して、スピンナーで固定するセンターロック式の「ハリブラント」風のリアホイールにパワーを伝達する。
走行距離はきわめて少なく、コンディションも新車同様だが……
いっぽうディテールにも気を配られ、ウッドリムのステアリングホイールにポリッシュ仕上げのモンツァスタイルのフューエルフィラー、「スチュワート・ワーナー」のメーター、ダッシュボードに取り付けられたバックミラー、FIA仕様のロールバー、サイドエキゾーストなど、時代を反映したディテールがふんだんに盛り込まれている。
「アメリカンレースの歴史のなかでもっとも魅惑的なチャプターのひとつを祝う、この息をのむようなコブラ 289FIA 50周年記念エディションは、ミッドセンチュリーのロードレースの時代を超えた魅力を渇望するエンスージアストに、比類ない没入感のあるドライビング体験を提供する」
RMサザビーズ北米本社ではそんな自信ありげなアピール文を添えつつも、20万ドル〜25万ドル(邦貨換算約3140万円〜3925万円)というかなり控えめなエスティメート(推定落札価格)を設定。そして2025年1月25日に迎えた競売では、エスティメート下限を大きく割り込むうえに、このモデルの相場としては比較的安価な14万8250ドル、日本円にして約2300万円という落札価格で、競売人の掌中のハンマーが鳴らされることになった。
製造社は創業者の正統性を有するシェルビー・アメリカン社。しかも高値で取引される事例の多い限定バージョンで、走行距離はきわめて少なく、コンディションも新車同様。にもかかわらず、アメリカやイギリスであまた作られている「市井の」コブラ・レプリカと大差ない価格は、おそらく出品者側にとっては不本意だったかと思われる。
そして、この安値に終わった理由もひとつふたつではないだろうが、コブラ・レプリカの世界でも低く見られがちなFRPボディだったことが、無視できない要因として挙げられるのでは……? と推測されるのである。

























































