史上2作目のポルシェ製「スピードスター」
RMサザビーズ北米本社がフェニックス市内で開催する「ARIZONA」オークションは、規模・内容ともに、1月のアリゾナのオークション群の中でも最上級のものとして知られます。今回は2025年版の出品車両の中から、ポルシェ「911」として初めて「スピードスター」を名乗った1989年モデルのポルシェ「911スピードスター ターボルック」を紹介します。
ビッグバンパー時代の最後を飾る限定モデル
1989年モデルとして1年限り生産されたポルシェ「911スピードスター」は、ポルシェのエンスージアストにとってひと目でそれと分かるモデルである。
もともと「スピードスター」の愛称は、20世紀初頭にフォード「T型」をベースとするレーサーとともに登場。のちにアメリカにおける自動車用語として定着していたが、その名を世間に知らしめたのは、なんといってもスパルタンかつ軽快なリアエンジンを搭載したポルシェ「356」だろう。
ポルシェ356および改良型「356A」のスパルタンバージョンとして製作されたスピードスターは、1950年代の大衆文化の中にその名を刻みながら、南カリフォルニアのサーキットなどにおいてもその名声を確立してゆく。
しかしポルシェのスピードスターは、同社の「356A」から「356B」へと切り替わる1958年をもって、いったん歴史の幕を閉じた。しかしそれから約30年後、「911カレラ3.2」の最終モデルイヤーにあたる1989年1月から8月にかけて、2シーターの「911スピードスター」(オプションM503)が限定生産されることになった。
製作台数はわずか2056台
ポルシェ 911としては初の「スピードスター」を標榜したこのモデルは、356の祖先へのオマージュとして軽量かつレーシーにデザインされたもの。ダブルハンプのグラスファイバー製トノカバーと劇的に低くなったウインドシールドが目を惹く。
このウインドシールドは911カブリオレ用の改造ではなく、完全な新設計。小さなレーシングスクリーンもオプションとして購入可能で、オーナーは自分で交換することとされてはいたものの、換装はポルシェのスペシャリストでもないとかなり難しいものだったそうだ。また、商品企画の段階では356スピードスターと同様、差し込み式で想定していたというサイドスクリーンは、通常のクルマのように巻き上げ式へと変更された。
製作台数はわずか2056台(ほかに諸説あり)とのことで、さらにそのうちの1900台以上が「911ターボ」のワイドボディをベースに製造されたとのこと。ただし、北米市場向けの「ターボルック」は、わずか823台にとどまったといわれている。






















































































































































