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30年放置された日本最古のポルシェ「930ターボ」が復活!「三和自動車」モノの個体を99%オリジナルと純正パーツでレストアしました

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 武田公実(TAKEDA Hiromi)/ランデヴー(RENDEZ-VOUS)

99%のオリジナリティを現代に遺す、奇跡のレストア

こうして「オートモビルカウンシル2023」にて公開された1975年式ポルシェ930ターボながら、じつはこのときすでにレストアへのプロジェクトは起動していたとのこと。初代オーナーのご子息からこの車両についての相談を受けていたランデヴーは、歴史的なポルシェに携わるという重責に悩みつつも、「このクルマを国内に残したい」、「整備/レストアの重要性と意義を伝えたい」、そして「文化的価値のある本車両を本来の姿に蘇らせ、次世代に受け継いでいきたい」という3つの熱き想いから、難航が予想される再生プロジェクトに乗り出すことになったという。

ところでこの930ターボは、ランデヴーで2024年夏から移行した現行のサービス、「予算」および「車種」の条件が揃った8人ないしは4人の共同所有オーナーを「マッチング」させ、その使用権料を月額換算で1年分支払うメソッドに準拠したものではなく、クラシックカーを中心としたコレクター向けの本格的「コレクタブルカー」を4人ないしは8人で一括購入するという旧サービスのもとに販売された、最後の1台である。

そしてオートモビルカウンシル2023の終了時点で4人の共同所有オーナーを確保し、ようやく念願のレストア作業に入ることになった。

保存環境が良かったのか、バーンファインドされた当初からボディには深刻な錆や腐食などはなく、細かい傷などを残しつつもオリジナルペイントを残す方向で決定。また、オプションの本革レザー内装やカーペットもすべていったん取り外し、クリーニングすることで対処可能と判断される。ところが、30年近くも動かしていなかったクルマ。しかも、精度の高さを整備で担保する必要のある空冷ポルシェである。エンジンやトランスミッションなど肝心かなめの機関部分は、すべてリビルドする必要に迫られた。

空冷ポルシェのオーソリティ集団がオーバーホール

ここで強い味方となってくれたのが、静岡・御殿場の「PORTECH(ポルテック)」だった。ポルシェを知り尽くした元ミツワ自動車のメカニックが再結集し、かつてのミツワ自動車のデポ(PDI拠点)があった場所に設立された、空冷ポルシェのオーソリティ集団である。

2023年10月、ポルテックに運び込まれた930ターボは、エンジンやトランスミッション、燃料タンク/フューエルラインなどをすべて取り外してオーバーホール。修理不能なものはポルシェの純正パーツを手に入れて、新品ないしはリビルド品に交換するなどの手立てが施された。実際、使用部品の99%はこの個体のオリジナルないしはポルシェ純正の交換用パーツのみで組み上げられたが、唯一室内のサンバイザーのみは1975年式特有のテキスタイルが入手不能となっているせいで、リプロ品で賄われているとのことである。

そして、この時代のポルシェを新車時代から取り扱ってきたポルテックの「匠の技」は、オリジナル性を最大限残したいとするランデヴー側の意向とも完全合致。メカニズム系は新車に近いコンディションを取り戻しつつも、内外装は半世紀前のオリジナルをほぼ残した、まさしく奇跡のレストアが実現に至ったのである。

ところで、今回のお披露目会の質疑応答にて寄せられた、

「またこの種のプロジェクトに挑むのか?」

という質問に対して、ランデヴー浅岡亮太代表は次のようにコメント。

「正直なところけっこうな赤字で、レストア進行中に少なくとも3回は、もうやめたいと本気で思いました。だから、もうやりたくない……、けどやっぱり挑戦したいですね(笑)」

しかも、次のプロジェクト用の車両はすでに用意してあるそうで、いちクラシックカー愛好家として、そちらの進展にも注目したいところである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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