旧モデルよりもすべてにおいてまろやか
実際の走りは、最新のアウディ車らしくスムースで洗練されたものだった。今回の取材と試乗は撮影込みでの限られた時間枠内ではあったものの、実車に触れて、走らせてみると、「S5」ということで想像していたよりも乗り味はしなやかな上、パワートレインの洗練されたマナーは場面を問わず快適なドライブを楽しませてくれる……そんな第一印象をもった。
旧S4アバントと較べるとボディサイズは全長+65mm、全幅+15mm、全高+15mm、ホイールベース+70mm、車重は素の状態で+240kgというのが数値上の差。にもかかわらずステアリングを切った際のクルマの挙動はコチラの思いに対して実に素直で軽快なほどだし、その上で旧S4よりもすべての挙動にまろやかさも感じる。モード切り換えも可能だが、低速での乗り心地もやさしく、これには最新スペックのBS・POTENZA SPORT ENLITEN(装着サイズは245/35 R20 98Y)の能力の幅広ささも貢献していそうだ。
今や(などと書くと何時代の人間か!? と思われてしまうが)トルクベクタリングも入って、クワトロにより安定した走りっぷりは、首都高速のコーナーをひとつ抜けただけでも実感する。もちろん動力性能は十二分な余裕で、然るべき場所でアクセルをより踏み込めば、キレ味の鋭いパワー感も堪能できる。
反対にゆっくりと流す場面では、Dセグメントのクルマらしいゆったりとしたドライブも楽しめる。曲面で連続した眼前のバーチャルコックピットプラスと中央のMMIタッチディスプレイ、さらに助手席側のMMIパッセンジャーディスプレイは、この種のインパネの殺伐とした雰囲気はなく、穏やかな気持ちで眺めていられるし、たとえばウインカーを作動させた時のインジケーターランプがインパネ上部のアンビエントライト左右端に組み込まれていたり……と、デザインを上手く使って機能が組み込まれている。
我々取材チームの試乗車はグレナデンレッドメタリックのS5アバントだったが、改めて外観を眺めてみると、初代クワトロ由来の前後ブリスターフェンダーが、エッジのとれたボディに馴染んだ(それでいて力強さを加味した)デザインということもわかった。それとフロントマスクのスッキリとしたデザイン、ディテールは、近年のアウディ車の中でもさり気なく傑作な部類ではないだろうか。いずれ「セダンタイプ」にも試乗してみたいが、SUV流行りではあるものの、ローフロアのこういうクルマをサラッと乗りこなすのは、とてもいいと思う。













































